避難安全検証法についての冒頭に書いたように、新・建築防災計画指針で示される「避難経路の部分」を階出口手前に設置して、火災から守る事を念頭に計画を進めます。
1. 避難経路の部分の設置
新・建築防災計画指針では、第一次安全区画と呼ばれる部分で、非避難階では在室者を階出口に誘導する通路、避難階では階段から屋外に誘導する通路で、面する開口部を不燃とし、排煙設備を設置します。
第一次安全区画が設置されていない計画と設置されている計画を示します。どちらも階避難安全検証法で安全性能の確認ができています。
第一次安全区画が設置されている場合との違いを見ていきましょう。
出火場所が何処でも避難方向は変わらない
第一次安全区画が設置されていない場合、火災から離れる方向に避難すると、出火室によって避難方向が変わってしまいます。例えば、2階の室(5)で出火した場合、室(6)の在室者は出火室の隣の室なので、階段(2)の方向に避難すればいいと火災の初期段階で判断できます。ところが室(7)の在室者は、どちらの方向に避難すればいいか直ぐには判断できません。実際の建物はもっと複雑なので、火災時にパニックになってしまいます。
第一次安全区画が設置されている場合、どこで出火しようが第一次安全区画方向に避難すれば必ず階段に到達することが可能です。
出火場所が何処でも全ての階段が利用できる
第一次安全区画が設置されていない場合、2階の室(5)(8)で出火した場合、階段の1つが避難に利用できなくなり、利用できる階段の負担人数が大幅に増え、避難完了時間が長くなってしまいます。
階段が火災室に面しないので、階段への煙流入が遅い
第一次安全区画が設置されていない場合、室(1)(4)(5)(8)で出火した場合、階段への煙流入が火災の初期段階で起こり、上階の避難にその階段が利用できなくなります。
避難階の火災が上階の避難に影響しない
第一次安全区画が設置されていない場合、室(1)(4)で出火した場合、上階からの避難者は、室(1)(4)で煙に巻かれてしまいます。
第一次安全区画の有用性をご理解いただけたでしょうか?こうした設計は建築基準法で規制できなかった部分を、防災評定で専門家の意見を交えより安全な建物にするために考えられました。ところが現在、防災評定はなくなり、避難安全検証法で安全性を確かめることになっています。しかし、避難安全検証法では、防災設計の基本となる第一次安全区画を設けなくても安全性能の確認ができてしまいますので、意識して設計を進めないと、かえって不安全な建物となってしまいます。
2. コスト削減だけを目標にしない
避難安全検証法を用いると建設コスト削減に繋がる可能性があります。しかし、それはあくまでも基本的な防災計画を立てた上であると考えてください。防災計画を立てずに避難安全検証法を採用して安全性能が確認できたとしても非常に危険な建物となってしまう場合があります。
3. 改修を考えた設計を心掛ける
避難安全検証法は、小さな数値の積み上げによって安全性能を確認します。よって、僅かな改修でもたちまち安全性能の確認ができなくなってしまう可能性があります。そこで、十分に余裕をもった設計を心掛ける必要があります。
4. 将来の改修工事に備える
仕様設計の場合、将来の改修時に元の設計者と違う設計者が行っても法規チェックは比較的簡単に行えます。しかし、避難安全検証法の場合、前提とその計算の積み重ねで設計が決まるので、申請時の計算資料がないと再検証に時間と費用がかかります。設計資料はしっかり保管するようにしましょう。
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