Column避難安全検証法使いこなし術

(23)徹底解説「煙高さ判定法」 第7回 階出口通過時間(1)

2024/05/01

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 煙高さ判定法(ルートB2)について、前回の階避難開始時間に続き、第7回では階出口通過時間について解説します。
 煙高さ判定法では、階出口通過時間として、歩行時間と出口通過時間の最大数値を用います。一方、避難時間判定法では歩行時間と居室出口通過時間をそれぞれ求め、合計して算出します。それについて、出口への移動(歩行)と出口の通過は、現実にはほぼ同時に行われることが想定されるにも関わらず、2つを合計するのは安全を過大視過ぎているとの意見が多くありました。そこで、煙高さ判定法では、以前から利用されてきた新建築防災計画指針による避難計算と同様の方法に改良されたと思われます。
 今回も、文末に添付する告示475号と照らし合わせながらご一読ください。

階出口通過時間法文解釈

 当該階の各室等の部分から直通階段(当該階が避難階以外の階で病院、診療所(患者の収容施設を有するものに限る。)又は児童福祉施設等(通所のみに利用されるものを除く。)の用途に供するものである場合にあっては、令第123条第3項第1号から第11号までに定める構造とした直通階段に限り、当該階が避難階である場合にあっては地上とする。以下このロにおいて同じ。)に至る各経路(避難の用に供するものであって、当該経路上にある各出口の幅が60センチメートル以上であるものに限り、当該室が当該火災室又は当該火災室(居室であるものに限る。)を通らなければ避難することができない部分である場合以外の場合にあっては、当該火災室を経由するものを除く。以下このロにおいて「避難経路」という。)ごとに当該階の各室等の用途、当該階の種類、当該直通階段の種類及び階出口滞留時間に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した階に存する者が当該階の各室等の部分から当該階から直通階段への出口(幅が60センチメートル未満であるものを除く。以下同じ。)の一に達し、当該出口を通過するために要する時間(以下、「階出口通過時間」という。)の内最大のもの(単位 分)
 法文では幾重にも説明が付加されて非常にわかりづらく感じられます。理解しやすいように分解します。
①階出口の条件
(当該階が避難階以外の階で病院、診療所(患者の収容施設を有するものに限る。)又は児童福祉施設等(通所のみに利用されるものを除く。)の用途に供するものである場合にあっては、令第123条第3項第1号から第11号までに定める構造とした直通階段に限り、当該階が避難階である場合にあっては地上とする。以下このロにおいて同じ。)
1)収容施設のある病院、診療所、児童福祉施設の直通階段は特別避難階段である必要がある。
2)避難階の場合は「直通階段」を「地上」と読み替える。
②居室から階出口に至る避難経路の条件
避難の用に供するものであって、当該経路上にある各出口の幅が60センチメートル以上であるものに限り、当該室が当該火災室又は当該火災室(居室であるものに限る。)を通らなければ避難することができない部分である場合以外の場合にあっては、当該火災室を経由するものを除く。以下このロにおいて「避難経路」という。)
1)経路上に設置される扉の幅は60cm以上必要
2)経路上の室の条件
 a)当該室が当該火災室の場合
避難経路a.jpg

 b)当該室が当該火災室(居室であるものに限る。)を通らなければ避難することができない部分である場合
避難経路b.jpg

 c)a)b)以外の場合にあっては、当該火災室を経由するものを除く。非居室である火災室を通る経路は認められない。
避難経路C.jpg 避難時間判定法では、このようなルートの避難でも制限なく、当該出火室で出火した場合の検証が行われずに確認審査を通過してしまう事例が問題となっていますが、煙高さ判定法では、これらの避難経路は利用できないと明確に示されています。

階出口通過時間の計算方法

 階出口通過時間は避難経路毎に求めた数値のうち最大のものです。計算の方法は検証対象の室の用途や内装の種類、開口部の性能に応じて異なります。
表1.jpg

①収容施設のある病院、診療所、児童福祉施設
・避難階
 避難経路等部分の滞留計算は行わず、歩行時間だけで算定します。
・避難階以外の階
 階段室にベッドの数に4を乗じた数値以上の面積のバルコニー又は付室を設置する必要があり、避難経路等部分の滞留計算は行わず、歩行時間だけで算定します。収容施設のある病院、診療所、児童福祉施設では、直通階段は特別避難階段とする必要があるので、特別避難階段の付室の面積に条件が付くと考えればいいでしょう。ただ、4乗という条件は非常に厳しく、例えば10床の病院では104=10,000㎡と非現実的な面積の付室が必要となります。この規定は2床程度の極小規模な施設を想定していると思われます。
②その他の用途
・避難階及び付室が設置されない直通階段
 出口滞留時間が3分以下の時は、歩行時間と出口滞留時間の大きい数値となりますが、3分を超える時は、他階からの避難者が階段内で滞留することが考慮されます。
 +3×max(1,N'-2)
 N'は建物の階数で、3階までは+3分ですが、4階では+6分、5階になると+9分と長くなっていきます。階煙高さ算定の項目で改めて解説しますが、階避難完了時間は10分以内にする必要があります。3階を超える建物で出口滞留時間が3分を超える場合、付室の設置が必須となります。また、避難階では付室による条件緩和がないため、出口滞留時間は必ず3分以内になるよう設計する必要があります。
・区画された付室が設置された直通階段
 付室を設置すると、6分まで条件が緩和されます。付室への一時的避難が可能になるので、階段内での滞留が起こりにくくなることが考慮されます。

 今回のコラムでは、出口通過時間算定の流れと計算過程で出口滞留時間が重要なポイントであることがご理解いただけたと思います。次回は出口滞留時間の算定方法について詳しく解説していきます。

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