(60)SED活用法(18) 他社が検証を行った物件の改築(ルートB1)
2025/11/15
- SED設定・操作・全般
「過去に他社が避難安全検証法を用いて設計した物件(以降、他社検証)の改築を請負い、SEDを使って改築後の検証を試みたところ、安全性能が確認できず行き詰まってしまった」SEDユーザーのみなさまからしばしばいただくご相談です。他社検証では、当初の検証計算の詳細が不明であることが多く、他社の避難安全検証法の解釈や前提条件、設計方針もわからないため、対応に苦慮することは少なくありません。
今回は、他社検証に対し、SEDを用いて再検証を行う際の基本的な進め方について解説します。
避難安全検証法の理解が前提
SEDは優れた避難安全検証自動計算システムですが、適正に利用するには避難安全検証法の基本的な計算方法の理解が不可欠です。避難安全検証法に関する全責任を負うのは設計者だからです。他社検証の改築についても同様です。それが既に確認申請が下り完了検査済証が取得された物件であっても、最後に設計変更した設計者が責任を負うことになります。
よくある例のひとつを紹介します。過去にA社が避難安全検証法を使って設計した工場について、約5年後、B社が改築工事を請け負いました。B社の設計担当者はSEDを利用し再検証を行ったところ、階検証の安全性能が確認できませんでした。原因は、廊下に面する窓からの煙伝播計算が漏れていたことでした。A社竣工時点で完了検査済み証を取得していたにもかかわらず、SEDの計算で判明したミスでした。B社設計者から、SEDが間違っているのではないかとの問合せもいただきましたが、SEDが正しいことは詳細な計算内容を見れば明らかでした。B社設計者は工場建主にその旨を伝え、工場建主はSEDの結果を根拠として当該物件の確認審査を行った検査機関に相談しました。その結果、検査機関は過去の審査ミスを認め、その損害についても補償されることになりました。そうして無事に改築工事は進められることになりました。
避難安全検証法の計算書は、排煙設備を無くすための形式的な報告書類ではありません。構造設計と同様、法的責任を伴う重要な設計書類です。まずは、避難安全検証法の計算に必要な設計データの種類や検証上の位置づけ、計算の流れを理解しましょう。他社検証に対しSEDで再検証を行う際には、避難安全検証法の基本を理解した上での慎重な対応が必要です。
改築前の計画で検証する
いきなり改築後の計画で検証を行うのではなく、まずは改築前の計画で検証を行い、他社検証の検証結果と相違がないか確認します。特に、室や開口部の入力データは検証計算の基です。それらが他社検証と一致していることの確認が必要です。
・居室検証
以下の項目について、各室毎に確認します。
避難開始時間:
確認のポイントは、「床面積」です。
SEDは入力図形から室面積を自動算出しますが、他社検証では室の形状に合致しない床面積で計算されているかもしれません。
歩行時間:
確認のポイントは、「歩行経路長さ」です。
SEDは、防災計画で一般的に使用される手法に基づき、室出口の垂直二等分線により負担領域を分け、壁から1m離れた基点から、壁に垂直または平行な経路を扉に向けて引きます。対してSED以外のツールでは異なる経路算出方法が採用されていることがあります。
出口通過時間:
確認のポイントは、「扉の有効幅」です。
SEDは、防災計画における避難計算と同様に、建具の形状に応じて有効幅を自動算定し、一定の余裕を持たせて計算に利用します。
煙降下時間:
確認のポイントは、「平均天井高さ・内装の種類・排煙量」です。
入力ミスを起こしやすいところなのでしっかり確認します。これらの数値に相違がないにも関わらず検証結果が異なる場合、他社の検証計算に誤りがあることが疑われます。その際は、各計算を一つ一つ確認し相違点を特定します。
・階検証
避難開始時間:
確認のポイントは、「Afloorの合計床面積」です。
歩行時間:
確認のポイントは、「歩行経路長さ」です。
階歩行経路は明確なルールが定められていないため、設計者によって歩行経路長さに差が出やすいところです。明らかに最長経路と見なせることを確認する必要があります。
出口通過時間:
確認のポイントは、「階避難に利用している扉とその有効幅」です。
この時、出火している室に設置された最も有効幅が大きい扉は階出口として利用しない点に注意が必要です。
階煙降下時間:
確認のポイントは、「出火室と煙伝播経路上の室面積」「平均天井高さ」「内装の種類」「開口部の面積」「防火性能」です。
これらは細かな数値計算の積み重ねであるため、数値入力が正確でも、小数点以下の取扱い等で微妙に結果が異なってくる場合があります。
改築前の検証結果に疑問がある場合の対応
改築前の検証結果の再現ができ、検証上の問題がないことが確認できれば、そのデータを基に改築による変更部分の検討に進みます。何らかの疑問が生じた場合は、建主に報告の上、適切な対応方法を検討する必要があります。
・投入数値に相違がある場合
設計図と相違がある場合は、他社検証時のケアレスミスを疑い、相違箇所を建主に報告した上で、新たに計測・確認した正しい数値を用いて検証計算を進めます。
・検証内容に疑問がある場合
検証の妥当性そのものに疑問がある場合には、現設計を審査した検査機関を含めた協議が必要となります。安易に結果をごまかして進めるなど厳禁です。後日発覚した際にすべての責任を負うことになりかねません。
・他社検証の詳細が不明な場合
他社検証の詳細が不明でわかるのは結果のみ。検証内容が確認できない場合には、自ら再度検証を組み立て、自社の検証結果をベースとして進める以外方法はありません。
SEDの機能を利用したデータ管理
作業をまとめると次の3ステップとなり、それぞれに対応するデータの管理が必要です。
①他社検証の再現データを作成
②他社検証の内容に問題がないか確認し、問題がある場合は修正案を作成
③改築計画の内容をデータに反映し、安全性能が確認できる設計とする
SEDでは、これらデータを1つのファイル内でバージョンごとに管理することが可能です。それが「バージョンを管理して保存」機能です。
・利用方法
(1) 複数のバージョンを保存
①メニューバー[ファイル(F)]‐[バージョン管理して保存(V)]から保存します。
②新規バージョンの名称を入力して「OK」をクリック
複数のバージョンが保存されているファイルでは、どのバージョンを開くか確認するダイアログが開きます。
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詳細はSEDリファレンスマニュアルをご参照ください。
以上、今回は他社検証の改築等でSEDを活用する方法について解説しました。他社検証の取扱いには慎重な対応が必要です。ご自身で進めることが困難と感じられましたら、ぜひ株式会社九門のコンサルティングをご利用ください。
株式会社九門が開発したSEDは、避難時間判定法(ルートB1)の検証で入力したデータを、検証方法を切り替えるだけで煙高さ判定法(ルートB2)でも検証可能です。データの入力はCAD感覚で簡単です。ぜひ、30日間無料トライアルをお試しください。
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