Column避難安全検証法使いこなし術

(2)避難安全検証の感覚を身につけよう

2022/11/01

表紙写真(明石大橋).jpg

避難安全検証法を使い辛く感じるわけ

 仕様設計では、スケッチをすると同時に法的要件のチェックが行えます。ところが避難安全検証法を利用した設計では、計算に必要な数値を抽出し計算を行う必要があります。しかも、結果は仕様設計の感覚とは大きく違います。

 居室のチェックを例として比較してみます。

<仕様設計>
設置階:14階以下
採 光:無窓階 内装準不燃で歩行距離40m以下(重複距離20m以下)
排 煙:自然排煙 120㎡/50=2.4㎡

仕様設計.jpg

歩行距離16.13m、D1扉を出て左右方向に23.87m以内に階段が設置されていれば重複距離を含めてOK 

 これでチェックは完了です。

<避難安全検証法(避難時間判定法 ルートB1)>
設置階:14階以下
採 光:無窓階 内装準不燃で歩行距離40m以下(重複距離20m以下)
排 煙:適用除外(条件を仕様設計と同じとするために設置)
室用途:事務室
在室者密度:0.125人/㎡ 在室者数:15人 【告示510号による】
積載可燃物の発熱量:560MJ/㎡ 【告示510号による】

避難安全検証法.jpg

重複距離は仕様設計と同様の確認が必要です。
上記条件で告示510号に従って居室の検証計算を行います。

避難開始時間:0.3652分
歩行時間  :0.2565分
出口通過時間:0.4817分
避難完了時間:1.1034分 > 煙降下時間:0.6897分
結果:安全性能は確認できない

仕様設計と同じ部屋であるにもかかわらず、安全性能は確認できませんでした。
何が原因かを探り対策が必要です。
計算結果から出口通過時間が長いことが判ります。
計算の詳細を確認します。

出口通過時間詳細.jpg

treachが火災拡大時間より長く、避難に利用できる有効幅Beffが小さくなっています。
また、避難完了時間と煙降下時間の差は大きく、避難に利用できる有効幅を大きくしたところでOKにはできそうもありません。
そこで、扉を追加設置して歩行距離を短くして、同時に避難に利用できる有効幅が広がるようにします。

避難安全検証法対策後.jpg

避難開始時間:0.3652分
歩行時間  :0.1731分
出口通過時間:0.1193分
避難完了時間:0.6576分 < 煙降下時間:0.6897分
結果:安全性能が確認できました

扉を追加設置することで安全性能が確認できました。
避難時間判定法(ルートB1)では床面積が小さく、積載可燃物の発熱量が大きな用途の室は、仕様設計と比較して何らかの対策が必要になります。
次に同じプランの室の用途だけを事務室附属の会議室に変更します。計算条件で違う部分は、積載可燃物の発熱量が160MJ/㎡となります。

避難開始時間:0.3652分
歩行時間  :0.2565分
出口通過時間:0.1961分
避難完了時間:0.8178分 < 煙降下時間:1.1785分
結果:安全性能が確認できました

十分な余裕を保って安全性能が確認できました。
排煙設備を中止しても煙降下時間1.0331分、安全性能は確認できます。

 このように、同じ形状の室であっても室用途によって結果が大きく違います。検証のベースとなる在室者密度と積載可燃物の発熱量が検証結果を左右するからです。また、室面積・天井高さ・出口幅と設置位置、建築計画によっても結果は変わります。決定要素が多数あるため単純な逆算だけで室の設計条件をみつけるのは困難です。
 避難安全検証法を使い辛いと感じる原因はここにあるのでしょう。

煙高さ判定法 ルートB2の場合はどういう傾向があるか

 避難時間判定法(ルートB1)のデータのまま、検証方法を切替えてチェックが可能です。メインメニュー:ファイル(F)/物件基本情報(Y)で表示される物件基本情報パネルで、検証方法の切替が可能です。

物件基本情報パネル.jpg

 検証の結果、先に検討したどのパターンでも安全性能が確認できました。同じ設計であるにもかかわらず理解しがたい結果です。避難時間判定法(ルートB1)は相当安全を見込んだ検証になっています。施行当時の研究レベルが低かったことが原因と言われています。
 この点について、株式会社九門では、避難時間判定法(ルートB1)で設計をした建物を利用し、結果の相違の確認を進めています。避難時間判定法(ルートB1)で居室の安全性能の確認が困難であった計画でも、仕様設計と同様の感覚で安全性能が確認できるようです。また、避難時間判定法(ルートB1)で課題とされていた問題点への対処もされています。詳細は改めて解説していきます。

様々なパターンを試してみよう

 仕様設計では、小規模な建物1件でも実際にやってみれば、何に注意して計画を進めればよいのかだいたい把握できるでしょう。ところが避難安全検証法では、様々なパターンを試し、それぞれどのような結果になるのか、数多く経験してみないことには傾向を知り得ません。しかも計算にたいへんな時間と手間がかかります。
 株式会社九門が開発したSEDは、CAD感覚で計画を入力するだけで即座に計算が完了します。このコラムで取り上げた居室チェック計算例のデータを添付します。ぜひ、30日間無料トライアルをお試しの上でご覧ください。

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