Column避難安全検証法使いこなし術

(3)避難時間判定法(ルートB1)と煙高さ判定法(ルートB2)を徹底比較

2022/12/01

表紙写真(神戸市内近景).jpg

 2000年(平成12年)告示1441・1442号として施行された避難安全検証法(避難時間判定法)は、2020年(令和2年)に告示509号として区画避難安全検証法が追加され、同時に告示1441・1442号は煙高さ判定法(ルートB2)の施行に備えて記号や検証方法の表現が告示510・511号として改正され、2021年(令和3年)告示474・475・476号として煙高さ判定法(ルートB2)が施行されました。
 この2つの検証方法は、何が違うのでしょうか。

検証方法の違い

避難時間判定法(ルートB1)

(1)居室毎に居室避難完了時間と居室煙降下時間(煙高さが床から1.8mに至るまでの時間)を比較し、居室避難完了時間≦居室煙降下時間となることを確認する。

(2)階毎に階避難完了時間と階煙降下時間(階出口が設置されている室において煙高さが床から1.8mに至るまでの時間)を比較し、階避難完了時間≦階煙降下時間となることを確認する。

煙高さ判定法(ルートB2)

(1)居室毎に居室避難完了時間を求め、避難完了時の煙層高さが床から1.8m以上であることを確認する。

(2)階毎に階避難完了時間を求め、火災室隣接部分において避難完了時の煙層高さが床から1.8m以上であることを確認する。

 この2つの検証方法は、似ているようで、とても大きな違いがあります。避難時間判定法(ルートB1)[以降ルートB1]では、火災による煙発生量は出火から一定(定常火災)とし、単純に蓄煙体積を煙発生量で除して煙降下時間を算出します。それに対し煙高さ判定法(ルートB2)[以降ルートB2]では、火災を出火から徐々に拡大する(成長火災)として、避難完了時間を算出した上でその時刻での煙層高さを算出するという現実的な検証方法が採用されています。

解決された問題点

 ルートB1の検証方法は、施行当時から様々な問題点が指摘されていました。ルートB2では以下の問題点が改善され、より安全性能の高い設計へと導かれるようになりました。

扱う人による結果の差異が解消

 ルートB1では、告示に書かれている検証方法以外に、過去の新建築防災計画指針を参考にすることや個人の解釈によって検証結果が大きく変わります。中には常識的にはあり得ない理不尽な解釈を示す審査機関もあります。その多くは、言葉尻だけを捕えたものや、審査者の個人的な自己満足や責任逃れが目的としか思えないものです。その背景には、建築士自身の、建築基準法に対しその隙を突いてかかるような悪しき姿勢があり、それは同時に避難安全検証法が一般的に浸透しない原因になっていると思われます。
 ルートB2では、告示上、曖昧な表現が減り、解釈の違いを生じにくく、個人的な解釈が入る余地は少なくなっています。それにより、検証方法に従うことで誰が検証計算を行っても同じ結果が得られるようになったのは喜ばしいことです。

避難完了時間算定の合理化

 ルートB1での避難完了時間は、避難開始時間+歩行時間+出口通過時間で算定します。しかし、これでは在室者全員が扉の前に集まってから一斉に出口から避難することになり、必要以上な安全を見込み過ぎだと指摘されていました。ルートB2では、歩行時間と出口通過時間(出口滞留時間)の長い方を採用するように改められました。

蓄煙体積の少ない室での煙高さ算定の見直し

 ルートB1では、煙発生量を一定とする定常火災の考え方を採用しています。蓄煙体積の少ない室では、出火初期の煙発生量が過大となり煙降下時間が極端に短く算定されるという傾向があります。ルートB2では煙発生量は火災の進展に従って変化する成長火災の考え方が採用され、蓄煙体積の少ない室の煙高さが極端に低く算定される傾向が改善されました。

居室内居室の制限

 ルートB1では、計算対象となる室を通らなければ避難できない部分を特に制限なく居室内居室として同時に避難を開始するものとして扱えます。ルートB2では以下のように計算対象の室に直接出口が設置されていない室が設置されている場合は、火災情報の伝達が遅れる事を考慮して避難開始時間に3分加算されるようになりました。

火災室である非居室を通って避難しなければならない居室を制限

 火災室である非居室を通って避難しなければならない居室が設置されている場合、ルートB1では制限はなく、火災室である非居室で出火した場合の居室の安全性能の確認を行う必要もありません。ルートB2では、このような計画は認められなくなりました。

火災による温度上昇を考慮

 煙温度の上昇180℃を超えないように考慮されるようになりました。

排煙は出火後時間が経たないと作動しない

 居室に設置される排煙設備は出火から3/5分以上経過しないと考慮されません。

避難完了時間の制限

 ルートB1では、建物の耐火性能を超える避難時間であっても制限はありませんが、ルートB2では階避難完了時間は10分を超えてはならないという制限が設けられました。

避難途上での煙高さを考慮

 ルートB1では、階出口が設置された室で階の煙降下時間の確認を行うため、避難途上で煙に曝されてしまう危険性がありました。ルートB2では、火災室の隣接室で煙高さを確認するようになり、避難途上で煙に曝されないことを確認するようになりました。


入院施設のある病院や児童福祉施設等の検証が可能に

 ルートB1は、入院施設のある病院や児童福祉施設等には利用できません。ルートB2は利用できるようになりました。


避難安全検証法の未来を開く煙高さ判定法(ルートB2)

 比較的単純で電卓やスプレッドシートを利用する検証作業も可能であるルートB1に比較して、ルートB2は、検証作業は非常に複雑でコンピュータの利用が必須となりますが、ルートB1で指摘された様々な問題点が解決され、誰もが確実に安全性能を確認できる検証方法として、もっと活用されるべきだと考えています。
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