Column避難安全検証法使いこなし術

(7)避難安全検証計算ツールSEDを使いこなそう

2023/04/01

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 弊社が開発した避難安全検証計算ツールSEDは、単に検証計算を行うだけではなく、様々な想いと大きな可能性が込められたソフトウエアです。

防災計画は設計者の責任

 個人経営の小規模な事務所を除き、たいていの設計事務所では少なくとも意匠設計担当と構造設計担当による分業化はされていると思います。公共施設等の設計を行う少し規模が大きいところになれば、衛生設備や電気設備担当も配置されていることでしょう。
 ところが防災設計担当は、全ての用途に対応可能な意匠設計者100人超の大規模な設計事務所であっても配置されていないところがほとんどです。旧態依然の防災計画評定や一部の特殊な設計のためだけに防災設計専門職員を配置することなど、経営上コストに見合わないことが理由だと思います。
 その結果、ほとんどの意匠設計者は、防災設計については『時間がない』『知識がない』『計算書の作成が大変』『審査機関との協議が面倒』『手慣れた人に依頼する方がスムーズ』といったことから、外注の防災コンサルタント業者に設計を依頼されているようです。しかし、外注業者はいくら専門知識や経験が豊富でも、基本計画が完了した時点で設計の依頼を受けるので、根本的な計画変更はできません。彼らは与えられた図面の範囲内で防災上の計算を成立させる方法を提示するだけです。それでは必ずしも真の安全性能は確認できません。このような仕事のやり方では、設計士として建て主への責任を果たしているとは言えないと思います。
 そこで活用していただきたいのがSEDです。基本的な防災計画の方法を学び、SEDを利用すれば、基本設計の段階から自身の力で真の安全性能が確認できます。
 たとえ申請書作成の時間の確保が困難であっても、まずは自ら安全性能の確認を行った上でコンサルタントに依頼していただくことができると思います。SEDを利用する防災設計担当を1人任命するところから始め、徐々に意匠設計担当全員に広げて行けば事務所全体の実力UPに繋がることでしょう。
 依頼されたコンサルタントもSEDを利用していればさらに効率的です。基本計画のSEDデータを渡すだけで良いのです。コンサルタント側はSEDを使って防災上の問題点の確認と入力データの申請図面との整合性のチェックを行い、必要に応じてデータを修正、計算書出力のボタンをクリックするだけで業務完了です。費用を抑えることにも役立ちます。さらに自分の行った検証計算に自信があれば、外注に依頼するのは申請書をまとめる作業だけで済みます。

SEDに込めた想い

防災コンサルティング用に開発されたSED

 開発当初、SEDは防災コンサルティング業務用ツールとして単純に検証計算を行うだけのものでした。コンサルティング事業が拡大するにつれ業務の合理化を図るため、入力データのチェック編集、見やすい検証結果の確認、申請書の自動出力、室名から設定用途の自動設定(一部制限あり)と、8年間に渡る1,200件以上のコンサルティングの経験を踏まえて機能拡張を行い、誰もが使いやすいツールとして現在の形となりました。そして現在も更なる利便性を追求して改良を進めています。
 避難安全検証法ルートB1の検証では、図面を入力し、必要な室属性を設定するだけで申請書までを短時間で作成することができます。避難安全検証法ルートB1はそもそも避難安全検証法の知識がなくても安全性能が確保できる検証方法として施行されました。しかし、設計者に基本的な防災設計の知識と建築士としての最低限のモラルがある前提で作られているため、それらの知識や常識のない設計者や計算代行業者に告示の盲点を利用された結果、非常に危険な設計を蔓延させる原因となってしまいました。SEDは防災設計の基礎さえ身につければ正しい避難安全検証を行うことが可能です。

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社内外を問わず共同作業に適したSED

 検証に必要なデータは、室面積・天井高さ・内装の種類・室用途・建具寸法・排煙設備・歩行距離といった建築設計の基本となるものから、仕様設計では不要な、在室者数・室内歩行時間・避難経路上の滞留・積載可燃物の発熱量・蓄煙体積・煙伝播経路毎の煙発生量等設計図面から計算により求める数値が必要です。
 SEDは図面を入力することによって、これらの情報を自動的に整理・生成します。計画が変わった場合は入力図面を修正するだけで検証に必要な数値も自動的に更新されます。あとは設計者が判断すべき諸条件に従い検証に必要なデータを入力するだけです。
 検証方法の概要は理解できても検証データの整理は面倒です。まして検証作業はさらに複雑です。それに加えて告示解釈にはバラつきがあり審査機関との協議や交渉が必要でそれには時間もかかります。ただでさえ膨大な作業を抱えた建築士の多くはこれらの作業を雑務と捉え、外注に出されているのではないでしょうか。または合理的だからといった理由で、1人の担当者にデータを抽出から検証作業や申請書作成、審査機関の対応まで、全て任せてしまっていませんか。そうした場合、データや検証のチェックはされていますか?ノーチェックのままで申請手続きを進めて作業に間違いがあったとしても最終的には審査機関の指摘に対応させれば問題なしと考えていませんか。
 業務量を減らしたい気持ちは理解できます。ならば、外注事務所と一緒にSEDを使い、SEDの図面入力作業をお願いすれば内容チェックも簡単で、申請書の信頼度も上がります。検証データの信頼度が上がると手戻りも減って時間の節約に繋がります。なにより設計士の検証スキルの向上にも繋がります。
 多忙を極める設計士が、全ての作業を1人で抱える必要はありません。プロジェクトの責任者である設計士に余裕が無いのなら、検証の要となる検証条件(室用途の捉え方)の確認と検証結果の評価、審査機関との協議を中心に行い、それ以外の作業は外注や部下に任せればよいのです。そのためにもSEDを利用していただきたいのです。
 SEDは設計士がもっとも慣れ親しんだ図面を中心に検証データが整理されます。検証計算の場面に応じ作業者が変わっても入力されたデータを見れば全てが理解できます。SEDをベースとすれば検証情報の共有は簡単です。
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基本計画時の防災設計ツール

 SEDは基本設計が完了してからではなく、設計初期段階からの利用が効果的です。SEDには2次元CADの基本的な作図機能が整備されていますので、単線スケッチをSEDで行えば安全性能の確認も同時に可能です。また、仕様設計・避難安全検証法のどちらで設計を進めるにしても設計に必要な各室面積は入力と同時に自動算定され、歩行距離の計測も可能です。

申請書作成支援

 居室が何百とあるような膨大な建物でもない限りSEDの検証計算は瞬時に完了します。納得のいく結果が得られるまで試行錯誤を繰り返してもストレスはありません。データの入力が完了し、納得のいく設定が決まれば、出力ボタンをクリックするだけ。必要な計算書類は設定に応じて自動的に出力されます。
 結果に不安なところがあるなら、事前に審査機関に計算書を提示して計算の概要を説明し、問題の有無を確認しましょう。問題があった場合も、SEDを利用すれば、即時に修正して正式な申請書として提出することも可能です。

施工中の変更チェック

 施工中の設計変更はつきものです。検証計算を外注のコンサルタントに依頼していると建て主からの突然の変更依頼に即答できません。しかしSEDで検証を行っていれば安心です。ぜひSEDをノートパソコンにインストールし打合せや現場に持参してください。変更による検証への影響がどこにいても即座にチェック可能です。スピーディーな対応は建て主からの信頼にも繋がります。

検証データの保管

 避難安全検証法を用いて設計された建物のメンテナンスには検証データの保存が欠かせません。SEDを利用すると、保存された物件ファイルを使って、検証の前提から改修後のチェックまで、簡単に確認・チェックが行えます。

トータル防災設計ツールを目指して

 近年、避難安全検証法の利用が進み、防災設計の知識が必要な建物が増えています。SEDの検証エンジンは、告示が改正されない限り、計算速度の向上以外、手を加える必要のない完成度であると自負しています。
 SEDが目標とするのは建築士のためのトータル防災設計ツールです。新建築防災計画指針による避難計算・二層ゾーンモデルの対応、申請書の完全自動出力等々、まだまだ開発の余地はあります。さらなる利便性・信頼性の向上を目指し、私たちの挑戦はこれからも続きます。

避難安全検証法の内製化をお考えの皆様へ

 避難安全検証法を内製化したいとSEDを購入したからといって、すぐに避難安全検証法を自由自在に使いこなすことは難しいと思います。短時間で避難安全検証法を効果的に利用されたい方は、株式会社九門の防災設計コンサルティングをご活用ください。コンサルティング契約をしていただくと同時にSED soloがご利用頂けるようになります。また、SEDの利用サポート、実際の物件の検証について入力内容チェックやアドバイスを受けられます。防災設計に関する各種講習会の開催も可能です。詳しくは「建築防災設計サポート」を参照ください。

 株式会社九門が開発したSEDは、CAD感覚で計画を入力するだけで即座に計算が完了します。ぜひ、30日間無料トライアルをお試しください。


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