Column避難安全検証法使いこなし術

(18)徹底解説「煙高さ判定法」 第2回 居室出口通過時間

2024/02/15

表紙写真.jpg

 煙高さ判定法(ルートB2)について、前回の居室避難開始時間に続き、第2回では居室出口通過時間について解説します。
 煙高さ判定法では居室出口通過時間として歩行時間と出口通過時間の最大数値を用います。一方、避難時間判定法では歩行時間と居室出口通過時間をそれぞれ求め、合計して算出します。それについて、出口への移動(歩行)と出口の通過は、現実にはほぼ同時に行われることが想定されるにも関わらず、2つを合計するのは安全を過大視過ぎているとの意見が多くありました。そこで、以前から利用されてきた新建築防災計画指針による避難計算と同様の方法に改良されたと思われます。
 今回も、文末に添付する告示475号と照らし合わせながらご一読ください。

居室出口通過時間法文解釈

 当該居室等の各部分から当該居室の出口(幅が60センチメートル未満であるものを除き、当該居室から直通階段(避難階又は地上に通ずるものに限り、当該直通階段が令第123条第3項に規定する特別避難階段である場合にあっては、当該直通階段への出口を有する室を同項第2号並びに第3号、第4号、第6号及び第9号(これらの規定中バルコニー又は付室に係る部分に限る。)並びに第10号(バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口に係る部分に限る。)に定める構造としたものに限る。以下同じ。)(当該居室が避難階に存する場合にあっては地上)に通ずる主たる廊下その他の通路に通ずる出口に限る。以下同じ。)を経由して直通階段(当該居室が避難階に存する場合にあっては地上)に至る各経路(避難の用に供するものであって、当該経路上にある各出口の幅が60センチメートル以上であるものに限る。以下このロにおいて「避難経路」という。)ごとに、当該居室等の種類、当該避難経路上にある当該居室の出口に面する部分(以下、「居室避難経路等の部分」という。)の収容可能人数及び居室出口滞留時間に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した在室者が当該居室等の各部分から当該居室の出口の1に達し、当該出口を通過するために要する時間(以下「居室出口通過時間」という。)のうち最大のもの。

 法文では幾重にも説明が付加されて非常にわかりづらく感じられますが、赤字の説明部分を省くと以下のようにまとめられます。

「居室避難経路等の部分の収容可能人数及び居室出口滞留時間に応じ、それぞれ表に掲げる式によって計算した在室者が当該居室等の各部分から当該居室の出口の1に達し、当該出口を通過するために要する時間(以下「居室出口通過時間」という。)のうち最大のもの」

 また、赤字の部分は、検証対象となる「当該居室の出口」の定義で、要は次の3点です。
 ①幅60cm以上である。
 ②階出口(直通階段・地上への出口)へ通じている。
 ③経路上に幅60cm未満のネックがないもの。
そして、①の扉に通じ②③を満たす部分を「避難経路」としています。

居室出口通過時間の計算方法

 居室出口通過時間は避難経路毎に求めた数値のうち最大のものです。計算の方法は検証対象の室の用途や内装の種類、開口部の性能に応じて異なります。
表1.jpg

(1)病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)又は児童福祉施設等(通所のみにより利用されるものを除く。)の用途に供するもの
 他の条件にあるような内装材による違いはなく、
   PcoProom
   であることが条件となります。

Pco
居室避難経路等の部分の収容可能人数(単位 人)

   式1.jpg

 総和記号Σは、複数の居室避難経路等の部分がある場合、それぞれ計算して合計する事を意味しています。例えば次の図で居室(1)の「居室避難経路等の部分」は廊下(1)を指します。
居室避難経路等.jpgさらに次の図では、居室(1)の「居室避難経路等の部分」は廊下(1)(2)の両方を指します。
居室避難経路等2.jpgkco
当該居室の出口に面する部分(以下「居室避難経路等の部分」という。)の種類に応じて次の表に定める有効滞留面積率
・有効滞留面積率

居室避難経路等の部分の各部分の種類 有効滞留面積率
居室 0.5
玄関ホール、ロビーその他これらに類するもの 0.7
廊下その他通路、階段室又は階段の付室(令第123条第3項第二号から第四号まで、第六号、第九号及び第十号に定める構造であるものに限る。)若しくはバルコニー(等項第三号、第六号、第九号及び第十号に定める構造であるものに限る) 1.0

 ここで注意すべきは、居室避難経路等の部分となる階段に付室やバルコニーがあって、有効滞留面積率を1.0とするには、条件があるということです。この条件を満たさないと、有効滞留面積率は0.7となります。煙高さ判定法でいう「付室」「バルコニー」とはこの条件を満たしている室を指すと言った方がわかりやすいと思います。

・条件(施行令第123条第3項抜粋)
二 階段室、バルコニー及び付室は、第五号の開口部、第七号の窓又は第九号の出入口の部分(第129条の13の3第3項に規定する非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供するバルコニー又は付室にあっては、当該エレベーターの昇降路の出入口の部分を含む。)を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
三 階段室及び付室の天井及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
四 階段室には、付室に面する窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
六 階段室には、バルコニー及び付室に面する部分以外に屋内に面して開口部を設けないこと。
九 屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口には第1項第六号の特定防火設備を、バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口には同号の防火設備を設けること。
十 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること

Aco:
居室避難経路等の部分の各部分の床面積(単位 ㎡)

an:
居室避難経路等の部分の用途に応じて次の表に定める必要滞留面積(単位 人/㎡)

居室避難経路等の部分の各部分の用途 居室避難経路等の部分の各部分の種類 必要滞留面積
病院、診療所(患者の収容施設を有するものに限る。)又は児童福祉施設等(通所のみに利用されるものを除く。) 4.0
児童福祉施設等(通所のみに利用されるものに限る。) 1.0
その他の用途 居室、廊下その他の通路又は玄関ホール、ロビーその他これらに類するもの 0.3
階段室 0.25
階段の付室又はバルコニー 0.2

Proom:
在室者のうち当該避難経路上にある当該居室の出口を通って避難する者の数(単位 人)

    式2.jpg
p:
建築物の部分の種類に応じ、それぞれ次の表に定める在館者密度(単位 人/㎡)
[告示475号参照]避難時間判定法で利用されるものと同じものです。

Aarea(room)
当該居室等の部分の床面積(単位 ㎡)

Bload(room):
当該居室の出口の幅の合計(単位 m)

Broom
当該避難経路上にある当該居室の出口の幅の合計(単位 m)
以下に示すような計画では、廊下(1)(2)部分が当該避難経路に当たるので、居室(1)の「当該避難経路上にある当該居室の出口を通って避難する者の数」の計算は、D1D2扉の両方を利用する人数となります。
避難経路等を利用する人数.jpg

 居室避難経路等の部分に避難者が収容可能な場合、歩行時間が居室出口通過時間となります。収容可能か否かの考え方はルートB1と同じですが、居室避難経路等に収容判定対象は当該居室等の在館者のみであることに注意が必要です。居室避難経路等の部分に避難者が収容できない場合、階避難安全検証法(ルートB2)は利用できません。

歩行時間
  式3.jpg

lroom
当該居室の各部分から当該避難経路上にある当該居室の出口の一に至る歩行距離(単位 m)

vcroud
建築物の部分の用途及び種類並びに避難の方向に応じ、それぞれ次の表に定める滞留歩行速度(単位 m/分)
[告示475号参照]避難時間判定法で利用される歩行速度とは違うので注意が必要です。

(2)(1)を除き準耐火構造の壁若しくは準不燃材料で造り、若しくは覆われた壁又は10分間防火設備で区画されたもの
tcrowd(room)
居室出口滞留時間(単位 分)
・居室出口滞留時間が3分以下の場合、居室出口滞留時間と歩行時間を比較して大きい数値
・居室出口滞留時間が3分より大きい場合、居室出口滞留時間と歩行時間の大きい数値に3分を加えた数値

(3)(1)(2)以外のもの
・居室出口滞留時間が1.5分以下の場合、居室出口滞留時間と歩行時間を比較して大きい数値
・居室出口滞留時間が1.5分より大きい場合、居室出口滞留時間と歩行時間の大きい数値に4.5分を加えた数値

 以上、煙高さ判定法(ルートB2)の居室出口通過時間の算定方法について解説しました。次回は居室出口滞留時間の算定方法について解説します。なかなか手強い法文ですが、もう少しお付き合いください。

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