Column避難安全検証法使いこなし術

(19)徹底解説[煙高さ判定法] 第3回 居室出口滞留時間

2024/03/01

表紙写真.jpg

 煙高さ判定法(ルートB2)について、(17)居室避難開始時間(18)居室出口通過時間に続き、今回は、居室出口滞留時間について解説します。添付の告示475号と照らし合わせながらご一読ください。

居室出口滞留時間の計算方法

 当該居室等の用途及び当該避難経路上にある当該居室の出口の幅の合計に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した居室出口滞留時間(単位 分)
表1.jpg

 当該居室等の用途について、通所のみに利用されるものを除く児童福祉施設等では滞留時間の算定は必要ないため、児童福祉施設等(通所のみにより利用されるものに限る。)とされています。また、患者の収容施設がない病院・診療所は「その他用途」として扱います。
 居室出口滞留時間は、当該居室の出口幅の合計に90[最大の流動量]を掛けたものとRneck(room) (直通階段等の一に至るまでの流動量)とを比較して場合分けをします。Rneck(room)流動量が、出口幅の合計に90[最大の流動量]を掛けたもの以上の場合は、単純に在室者数を90[最大流量]×扉幅の合計で除する事によって居室出口滞留時間を求めます。逆にRneck(room)で算出された流動量が、最大の流動量より小さい場合は、滞留空間を評価して滞留時間を調整します。

Broom
当該避難経路上にある当該居室の出口の幅の合計(単位 m)

Proom
在室者のうち当該避難経路上にある当該居室の出口を通って避難する者の数(単位 人)

Pco
居室避難経路等の部分の収容可能人数(単位 人)

 これら3つの数値は、当該居室から同じ避難経路に属する複数の居室避難経路等の部分がある場合、居室出口通過時間の計算方法の病院・診療所等の居室避難経路等の部分の収容可能人数と同様、合計して算定することに注意してください。
避難経路.jpgRneck(room)
次の式によって計算した当該避難経路の流動量(単位 人/分)
 式Rneck(room).jpg
Dco(room)
当該避難経路上の各廊下(当該居室等に設けられた廊下を除く。以下このロにおいて同じ。)の幅のうち最小のもの(単位 m)
 各廊下の幅は有効幅となります。また「廊下」と記述されていますが、廊下専用の用途の室に限らず避難経路となる全ての室が対象です。以下の例では①②③の寸法の中の最小値を採用します。

Dco.jpgRd(room)
次の式によって計算した当該避難経路上にある各出口(当該居室等に設けられた出口を除く。以下このロにおいて同じ。)の有効流動量のうち最小のもの(単位 人/分)
 式Rd(room).jpg

Bd(room)
当該出口の幅(単位 m)

Nd(room)
当該出口の種類に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した当該出口の流動係数(単位 人/分・m)
表2.jpg

・階段又は居室に設けられた出口
 どこに設置された出口なのか非常にわかりづらいと思います。ここでの計算は、当該避難経路から外へ出る方向に避難するのだから主体は当該避難経路です。そこで以下のように読み替えれば理解しやすいと思います。
 「当該避難経路からの出口で階段又は居室に設けられたもの」
 図面で表すと以下のようになります。

Nd.jpg

・その他の出口
 流動係数は、階段又は居室に設けられた出口では90/分・mと固定ですが、その他の出口では、避難経路の最小廊下幅と計算対象の扉の幅によって90120/分・mの間で変動します。どのような条件で変わるのか見てみましょう。式には変数が2つあるのでBd(room)/Dco(room)部分をXに置き換えます。すると
 150 - 60X > 90  X < 1
 150 - 60X > 120   X > 0.5
計算対象の扉の幅より避難経路の最小廊下幅が大きいと流動係数は90より大きくなり、その差が2倍になると流動係数は120となることがわかります。

Rst(room)
次の式によって計算した当該避難経路上の各怪談(当該居室等に設けられた階段を除く。以下このロにおいて同じ。)又は直通階段の有効流動量のうち最小のもの(単位 人/分・m)
 式Rst(room).jpg

Nst(room)
当該階段の種類、避難の方向及び当該階段の幅に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した当該階段の流動係数(単位 人/分・m)
表3.jpg

Dlanding(room):
当該階段の踊り場の幅(単位 m)

Dst(room):
当該階段の幅(単位 m)

N':
当該建築物の階数

 階段幅と踊り場幅に違いがある場合、階段内でのネックが評価されます。どのような結果になるか実際に数値を代入して確認してみます。

付室付きの階段の流動係数(階段幅≧踊場幅 下り)
計算式.jpg

付室が設置されない場合(階段幅≧踊場幅 下り)
 式Nst(room).jpg
 基本的には付室がある場合と同じですが、付室が設置されていると付室内で一時的に待機できるため階段内で滞留が生じにくく、スムーズな避難が可能となります。付室が設置されていないと他階からの避難者と階段内で合流することで滞留が生じやすく、3階建て以上の建物では流動係数は小さくなり、避難完了時間は長くなります。
 こうした考え方は避難時間判定法には無かったものです。煙高さ判定法では、付室の設置を促すことによって、階段内への煙流入も抑えられ、より安全な建物に誘導されるように考えられています。

 今回は、居室出口滞留時間の算定方法について解説しました。今回を含む3回のコラムで居室避難完了時間算定の基本的な流れがご理解いただけたと思います。同時に、煙高さ判定法(ルートB2)は避難時間判定法(ルートB1)の欠点が補われ、より安全な建物の設計が可能な検証方法となっていることも感じていただけたと思います。
 これは建築計画を進める上での基本事項であり、理解して設計に活用することは建築士としての責務に他なりません。実際、多忙を極める中で、複雑な計算に取り組むことはたいへんでしょうが、外注業者等に任せず、ぜひご自身で基本を理解し、安全な建物造りに生かしていただきたいと願います。
 次回は、居室煙層下端高さについて、2回にわたって詳しく解説いたします。ご期待ください。

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