Column避難安全検証法使いこなし術

(26)徹底解説「煙高さ判定法」 第10回 火災室隣接部分の煙層下端高さ(2)

2024/06/15

表紙写真.jpg

 前回は、階避難完了時の火災室隣接部分での煙層下端高さの算定方法の流れについて解説しました。引き続き今回は、火災室隣接部分での煙層下端高さ算定の基準となる火災室隣接部分での煙層上昇温度の算定式について解説します。添付の告示475号と照らし合わせながら読み進めてください。

火災室隣接部分の煙層上昇温度は2段階で求める

 火災室隣接部分の煙層上昇温度は、まず、当該火災室の煙層上昇温度を求め、次に、隣接部分の開口部、壁の仕様によって噴出熱気流の運搬熱量(居室計算の計算式では1秒間当たりの発熱量(発熱速度)と表現される)を求めることで算定します。

∆Tf,floor
次の式によって計算した火災室隣接部分の煙層上昇温度(単位 度)
 式1.jpg
 居室の煙層上昇温度を求める式と同じです。異なる点は、Qf,floor部分で、他室での出火からの噴出熱気流の運搬熱量となり、以下の式で算出します。

Qf,floor
当該火災室からの噴出熱気流の運搬熱量(単位 kw
 式2.jpg

md
次の式に掲げる式によって計算した当該火災室からの噴出熱気流の質量流量(単位 Kg/秒)
 式3.jpg

 噴出熱気流は、開口部からと壁からの噴出量(面積×開口率)を合計して求めます。開口率は開口部の種類や壁の仕様によって異なります。以下に示します。

Hd(max)
当該火災室の当該火災室隣接部分に面する壁に設けられた各開口部の下端のうち最も低い位置から当該各開口部の上端のうち最も高い位置までの高さ(単位 m)

図1.jpg

Cd
当該火災室の当該火災室隣接部分に面する壁に設けられた開口部の種類に応じ、それぞれ次の表に定める当該火災室の当該火災室隣接部分に面する壁に設けられた開口部の開口率
表1.jpg

 簡単にまとめると、開口率は、防火設備(1号)の場合0.01、防火設備(2号)の場合0.001。10分間防火設備で内装が木材かつSP設置しない場合1.0、ということです。

Ad
当該火災室の当該火災室隣接部分に面する壁に設けられた開口部の開口面積(単位 ㎡)
 計算式のCd Ad の部分にΣが付いているので、複数の開口部がある場合、その合計となります。

Cw
当該火災室の内装仕上げの種類及び当該火災室隣接部分に面する壁の種類に応じ、それぞれ次の表に定める当該火災室の当該火災室隣接部分に面する壁の開口率
表2.jpg

Bw
当該火災室の当該火災室隣接部分に面する壁の幅(単位 m)

Hw
当該火災室の当該火災室隣接部分に面する壁の高さ(単位 m)
図2.jpg

ρf,room
次の式によって計算した避難完了時間が経過した時における当該火災室の煙層密度(以下単に「当該火災室の煙層密度」という。)(単位 kg/㎥)

 式4.jpg
 
この式は居室避難完了時間が経過した時における居室の煙層密度算定式と同じです。ただし、スクリンプラーが設置されている場合が考慮されるため、式中で利用される火災室の煙上昇温度の算定式は異なります。

Aα(floor,r)
当該火災室隣接部分に設けられた給気口(当該火災室に設けられた限界煙層高さ有効開口部の開放に伴い開放され又は常時開放状態にあるものに限る。)開口面積の合計(単位 ㎡)
 給気口は、Hlim(限界煙層高さ)以下の部分に設置された開口部です。限界煙層高さについて、煙高さ判定法の告示内では説明されていません。避難時間判定法の告示には同じ記号で説明があるので、同じ解釈であると考えられます。すると、煙高さは1.8m以上必要となり、ここでの給気口は、基準点より1.8m以下の部分に設置された開口部ということになります。

Aα(f,room)
当該火災室に設けられた給気口(当該火災室に設けられた限界煙層高さ有効開口部の開放に伴い開放され又は常時開放状態にあるものに限る。)開口面積の合計(単位 ㎡)

 Aα(floor,r)と同様、ここでの給気口は当該火災室から当該火災室隣接室に通じる開口部のHlim以下の部分に設置された開口部となります。

Hlim
当該室の種類及び当該室の開口部に設けられた防火設備の構造に応じ、それぞれ次の表に定める数値(以下、「限界煙層高さ」という。)(単位 m)【告示510号より】
表3.jpg

当該室の種類を以下のように読み替えます。
「直数階段に面する開口部を有する室」→当該火災室隣接部分
「その他の室」→当該火災室

Ef.floor:
当該火災室の排煙量
 当該出火室に設置された排煙設備は、常に評価の対象となります。詳しくは次々回コラムで解説します。

∆Tf,room
階避難完了時に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した階避難完了時間が経過した時における当該火災室の煙層上昇温度(以下単に「当該火災室の煙層上昇温度」という。)(単位 度)
表4.jpg

tescape(floor)
前号に規定する階避難完了時間(単位 分)

tm(floor)
当該火災室又は当該火災室に隣接する室の内装仕上げの種類に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した当該火災室又は当該火災室に隣接する室の燃焼抑制時間のうち最小のもの(以下「火災室燃焼抑制時間」という。)(単位 分)

Qf,room
階避難完了時間に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した当該火災室における1秒間当たりの発熱量(単位 kw

∆Troom(max)
2号に規定する最大煙層上昇温度(単位 度)

tm(floor)tm(room)]、Qf,room∆Troom(max)は居室計算で利用するものと同じです。(20)徹底解説[煙高さ判定法] 第4回 居室煙層下端高さ(1)を参照してください。

Hroom
当該火災室の基準点から天井までの高さの平均(単位 m)

Aw(f.room)
当該火災室の壁(基準点からの高さが天井の高さの1/2の部分を除く。)及び天井の室内に面する部分の表面積(単位 ㎡)
 居室計算で用いるAw(room)「当該居室の壁(基準点からの高さが1.8m以下の部分を除く。)及び、天井の室内に面する部分の表面積(単位 ㎡)」と混同しやすいので注意が必要です。

msp
当該火災室のスプリンクラー設備等(スプリンクラー設備又は水噴霧消火設備で自動式のものに限る。以下このイにおいて同じ。)の設置状況に応じ、それぞれ次の表に定めるスプリンクラー設備等の1秒間当たりの有効散水量(単位 Kg/秒)
表5.jpg

 以上、今回は火災室隣接部分の煙層上昇温度の算定までを解説しました。次回は階出口通過時間と火災室隣接部分の煙層上昇温度の関係からどのように煙層下端高さを求めるのか詳しく解説します。

 株式会社九門が開発したSEDは、避難時間判定法(ルートB1)の検証で入力したデータを、検証方法を切り替えるだけで煙高さ判定法(ルートB2)でも検証可能です。データの入力はCAD感覚で簡単です。ぜひ、30日間無料トライアルをお試しください。


建物に携わる皆様へ
永く愛される建物づくりを、
SEDシステムがサポートします

ライセンス購入