(30)徹底解説「煙高さ判定法」 第14回 全館煙層下端高さ(1)
2024/08/15
煙高さ判定法の全館避難安全検証法について、全館避難完了時間に続き、全館煙層下端高さ算定方法の解説に入りたいと思います。数回に分けてじっくりと読み解いていきますが、まず今回は煙層下端高さの算定部分について理解しましょう。添付の告示476号と照らし合わせながら読み進めてください。
全館煙層下端高さ算定部分について
令第129条の2第4項2号ロに規定する同項第1号ロの規定によって計算した避難完了時間が経過した時における当該火災室において発生した火災により生じた煙又はガス(以下「煙等」という。)の階段部分及び当該火災室の存する階(以下「出火階」という。)の直上階以上の各階の各部分における高さ(当該各部分の基準点(床面の最も高い位置をいう。以下同じ。)から煙等の下端の位置までの高さとする。)は、次のイ又はロに掲げる建築部分の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める数値とする。
イ 直通階段の部分、出火階の種類、当該直通階段に隣接する各室(出火階にあるものに限る。以下「階段隣接室」という。)における煙等の高さ(当該各室の基準点から煙等の下端位置までの高さとする。以下「階段隣接室の煙層下端高さ」という。)のうち最小のもの及び当該直通階段から地上に至る経路上にある各室(以下、「階段避難経路の部分」という。)における煙等の高さ(当該各室の基準点から煙等の下端の位置までの高さとする。以下「階段避難経路の部分の煙層下端高さ」という。)のうち最小のものに応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した数値(以下、「直通階段の部分の煙層下端高さ」という。)
ロ 階段の部分(直通階段の部分を除く。)及び出火階の直上階以上の各階の部分 出火階の直上階以上の各階における竪穴部分(出火階の一部を含むものに限る。以下このロにおいて同じ。)に隣接する各室(以下「竪穴隣接室」という。)における煙等の高さ(当該各室の基準点から煙等の下端の位置までの高さとする。以下「竪穴隣接室の煙層下端高さ」という。)のうち最小のものに応じ、それぞれ次の表に定める高さ(以下「階段の部分及び出火階の直上階以上の各階の部分の煙層下端高さ」という。)
避難完了時の煙層下端高さは、階段隣接室・階段避難経路の部分・竪穴隣接室の3ヶ所で確認する必要があります。
階段隣接室:
避難時間判定法での全館煙降下時間算定室に当たります。煙層下端高さが 未満にならないことを確認します。
階段避難経路の部分:
避難時間判定法では検証を行っていない部分です。避難階で出火した際、上階からの避難者が煙に曝されないために、煙層下端高さが1.8m以上であることを確認します。
竪穴隣接室:
避難時間判定法では竪穴に煙が流入した時点を全館煙降下時間として検証を進めましたが、煙高さ判定法では、竪穴を通じて煙が上階の竪穴隣接室に伝播し、全館避難完了時に煙層下端高さが1.8m以上であることを確認します。この方法により、竪穴内で出火した場合の検証が行えるようになりました。
隣接室とはどのような室を指すのか
階避難安全検証法で、煙層下端高さを求める室は「火災室隣接部分」と表記されています。隣接部分とは隣り合った室を指し開口部の有無は関係ありません。階避難安全検証で火災室隣接部分の煙層下端高さを求める際、壁の種類によっては出火から時間が経つと壁の健全性が保たれず開口率が1.0となり、開口部が設置されていなくても煙が伝播して避難に支障が生じる危険性があるからです。それに対して「隣接室」とは、開口部で通じている室を指します。全館避難安全検証では、既に階避難安全検証法によって、出火階での火災拡大による間仕切壁の崩壊を含めた安全性能は確認済みです。また、階段隣接室となる付室は耐火構造で区画されているため間仕切壁は崩壊せず、開口部から階段への煙流入がないのであれば安全性能は満たされていると判断されます。
イに規定される直通階段の部分の煙層下端高さ
Zroom(st):
避難完了時間、当該階段隣接室の種類、避難完了時間が経過した時における当該階段隣接室の煙層上昇温度(以下単に「階段隣接室の煙層上昇温度」という。)及び火災部分から当該階段隣接室への噴出熱気流の運搬熱量に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した階段隣接室の煙層下端高さのうち最小のもの(単位 m)
Zroom(ev):
避難完了時間、当該階段避難経路の部分の種類、避難完了時間が経過した時における当該階段避難経路の部分の煙層上昇温度(以下単に「階段避難経路の部分の煙層上昇温度」という。)及び火災部分から当該階段避難経路の部分への噴出熱気流の運搬熱量に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した階段避難経路の部分の煙層下端高さのうち最小のもの(単位 m)
Hlim:
限界煙層高さ(令和2年国土交通省告示第511号第二号に規定する限界煙層高さをいう。以下同じ。)(単位 m)
階段隣接室の限界煙層高さは、階段に設置された開口部で決まり、開口部から煙が漏れ出す高さを示します。防火性能を有する場合は開口高さの1/2、防火性能を有しない場合には開口高さとなります。
Hdst:
直通階段の部分の基準点から天井までの高さの平均(単位 m)
・Zroom(st)≧Hlim
全館避難完了時の階段隣接室での煙層下端高さが、限界煙層高さ以上、すなわち、煙が階段内に流入しないということです。Zdst=Hdstと示されていると直通階段の部分の基準点から天井までの高さの平均が必要であるように思われますが、具体的な数値は不要です。階段内に煙は降下していないことを表しています。
・Zroom(ev)≧1.8
避難階では、階段避難経路の部分で煙層下端高さが1.8mを下回らないことも条件であることが示されています。
・Zdst=0
直通階段の部分の煙層下端高さが0とは、階段内に煙が充満している状況ではなく、直通階段内に煙が流入している、または、階段避難経路の部分で煙に曝されていることを表しています。
Zroom(up(s)):
階段の部分及び出火階の直上階以上の各階の各部分の煙層下端高さ(単位 m)
直通階段の部分の煙層下端高さは、①Zroom(st)(階段隣接室の煙層下端高さのうち最小のもの)、②Zroom(ev)(階段避難経路の部分の煙層下端高さのうち最小のもの)を、吹抜(竪穴)が設置されている場合は、③Zroom(up(s))(竪穴隣接室の煙層下端高さのうち最小のもの)を求めれば算定できることがご理解いただけたと思います。
次回は、階段隣接室の煙層下端高さの算定方法について解説します。
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