(31)徹底解説「煙高さ判定法」 第15回 全館煙層下端高さ(2)
2024/09/01
前回に引き続き、全館煙層下端高さ算定について、特に今回は直通階段の部分の煙層下端高さ算定に必要な階段隣接室の煙層下端高さの算定方法を取り上げます。添付の告示476号と照らし合わせながら読み進めてください。
直通階段隣接室の煙層下端高さ
避難完了時間、当該階段隣接室の種類、避難完了時間が通過した時における当該階段部分から当該階段隣接室への噴出熱気気流の運搬熱量に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した階段隣接室の煙下端高さのうち最小のもの(単位 m)
階避難安全検証において火災室隣接部分の煙層下端高さが避難完了時間や煙層上昇温度によって決定されるのと同様に、階段隣接室の煙層下端高さもそれらの条件により算出されます。全館避難完了時の階段隣接室の煙層上昇温度の算定には、正確な全館避難完了時間の算出が不可欠です。全館避難完了時間の算出方法については本コラム(12)~(13)で詳しく解説していますので、そちらを参照してください。
安全性能の確認は、全館避難完了時間が火災部分保有遮炎時間以下であることが大前提です。つまり、火災部分保有遮炎時間を越えると安全性能は確認できません。これは、避難時間判定法による全館避難安全検証法では、全館避難完了時間が建物の耐火時間を大幅に超えていても単な工夫で全館煙降下時間を延ばせるため安全性能が確認できてしまうという問題に対応し改良が加えられました。
また、特別避難階段の付室については算定対象から除外され、煙層下端高さは計算をすることなくHlimとなります。特別避難階段内の安全性能を高いとする仕様設計との整合性が図られたと考えられます。
火災部分保有遮炎時間が全館避難完了時間を超えないことを確認できたら、次に、火災室隣接部分の煙層上昇温度が180度以下であることを確認します。居室検証や階検証と同様に、隣接部分の煙層上昇温度が180度を超えると煙層下端高さは0mになってしまいます。階段隣接室の煙層上昇温度の算定は、階検証での火災室隣接部分の煙層上昇温度の算定式と同じロジックを用いますが、火災室と火災室隣接部分が必ず接している階検証と異なり、全館検証では、必ずしも接しているとは限りません。その場合は、階段隣接室中間部分を介して計算を行います。
ここまで、検証方法の概略はご理解していただけたと思います。これより、それぞれの項目について、より詳しく解説したいと思います。
建物の健全性が失われるまでに避難完了する必要がある
在館者の安全を確保するために必要なのは、建物の健全性が失われるまでに避難が完了することです。避難時間判定法では全館避難完了時間に制限はなく、建物の健全性に関しては設計者の常識に委ねられていましたが、煙高さ判定法では、火災部分を構成する床や壁の性能に応じて制限が課されました。
tfr(room):
火災部分を区画する床又は壁の構造に応じ、それぞれ次の表に定める時間(火災部分にスプリンクラー設備(水源として、水道の用に供する水管を当該スプリンクラー設備に連結したものを除く。)水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のもの(以下「スプリンクラー設備等」という。)が設けられている場合にあっては、同表に定める時間に二を乗じた数値)のうち最小のもの(以下、「火災部分保有遮炎時間」という。)(単位 分)
複雑な分類のように感じられますが「一般的な建物で内装の種類が全て不燃であれば、火災部分保有遮炎時間は20分になる」と覚えておけばよいと思います。全館避難完了時間が20分を超える場合には、火災部分の区画に工夫が必要となります。
階段隣接室の煙層上昇温度算定
階段隣接室の煙層上昇温度の算定方法は、階段隣接室が火災部分と隣接しているか否かによって異なります。
・火災部分に隣接する場合
階検証での火災室隣接部分での算定方法と同様に、火災部分から繋がる階段隣接室の開口部、壁の仕様によって算出される噴出熱気流の運搬熱量(居室計算の計算式では1秒あたりの発熱量(発熱速度)と表現される)から階段隣接室の煙層上昇温度を求めます。階段隣接室の煙層上昇温度の上限は、火災部分の煙層上昇温度となります。
(2)限界煙層高さ
火災部分から階段隣接室に通じる開口部で決まります。
(3)当該階段隣接室の壁(基準点からの高さが限界煙層高さ以下の部分を除く。)及び天井の室内に面する部分の表面積
限界煙層高さは、階段隣接室から階段に通じる開口部で決まります。
(4)火災部分の煙層上昇温度
計算にはよらず、火災部分の内装で決まります。
・火災部分に隣接しない場合
基本的な算定方法は火災部分に隣接する式と同じです。ただし、煙層上昇温度の上限は階段隣接室中間部分の煙上昇温度となりますので、それを求める必要があります。
(5)火災部分から当該階段隣接室への噴出熱気流の運搬熱量
火災部分から当該階段隣接室への噴出熱気流の運搬熱量算定式は、火災部分に隣接する場合と異なります。
(6)階段隣接室中間部分の煙上昇温度
階段隣接室中間部分の煙上昇温度を求めるには火災部分から階段隣接室中間部分への噴出熱気流の運搬熱量を求めます。
(7)火災部分から階段隣接室中間部分への噴出熱気流の運搬熱量
実はこの計算式は、(1)火災部分から当該階段隣接室への噴出熱気流の運搬熱量の計算式と同じです。
(8)階段隣接室中間部分の基準点から天井までの高さの平均
さて、次回は、階段隣接室が火災室に隣接する場合の計算の詳細について解説します。記号ばかりでいかにも複雑で難解そうな計算式が続きますが、全て同じロジックで構成されています。理屈がわかれば計算そのものは簡単です。どうぞじっくりとお付き合いください。
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