(32)徹底解説「煙高さ判定法」 第16回 全館煙層下端高さ(3)
2024/09/15
直通階段の部分の煙層下端高さ算定に必要な階段隣接室の煙層下端高さの算定方法の解説を続けます。前回述べた階段隣接室の煙層上昇温度算定について、今回は階段隣接室が火災部分に隣接する場合の算定方法を詳しく解説します。添付の告示476号と照らし合わせながら読み進めてください。
階段隣接室が火災部分に隣接する場合の煙層上昇温度算定方法
前回も述べたように、階検証と同様に全館検証でも、階段隣接室が火災部分に隣接する場合は、その開口部、壁の仕様によって算出される噴出熱気流の運搬熱量(居室計算の計算式では1秒あたりの発熱量(発熱速度)と表現される)から階段隣接室の煙層上昇温度を求めます。
∆Troom(st):
当該階段隣接室の種類に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した階段隣接室の煙層上昇温度(単位 度)
階検証での火災室隣接部分での煙層上昇温度の算定と同じロジックです。ただし、火災部分の煙層上昇温度を超えないように制限が設けられています。
Qroom(st):
当該階段隣接室の種類に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した火災部分から当該階段隣接室への噴出熱気流の運搬熱量(単位 kw)
md(f,st):
次の式によって計算した火災部分から当該階段隣接室への噴出熱気流の質量流量(単位 Kg/秒)
階検証での当該階段隣接室への噴出熱気流の質量流量の算定と同じロジックです。この時、室毎ではなく、火災部分毎に捉えることに注意してください。
Hd(f,st)(max):
火災部分の当該階段隣接室に面する壁に設けられた各開口部の下端のうち最も低い位置から当該各開口部の上端のうち最も高い位置までの高さ(単位 m)
Hd(f,st)(max):
火災部分の当該階段隣接室に面する壁に設けられた各開口部の下端のうち最も低い位置から当該各開口部の上端のうち最も高い位置までの高さ(単位 m)
全館検証では、避難完了時間が建具性能(次に述べるtfr(d):「防火設備保有遮炎時間」)を超えると防火設備の効力が失われるものとして扱われることに注意してください。
階検証では、階避難完了時間を10分以内とする必要があることが規定されているため、10分間防火設備であっても防火設備保有遮炎時間を超えることはなく、開口部の種類に応じ開口率が設定されています。10分間防火設備も他の防火設備と同等と扱われます(参照:コラム(26))。全館検証では、避難完了時間が10分を越え防火設備保有遮炎時間を超えるため、その他扉として扱われ、開口率1.0とされます。
tfr(d):
当該開口部の設けられた防火設備の種類に応じ、それぞれ次の表に定める時間(火災部分にスプリンクラー設備等が設けられている場合にあっては、同表に定める時間に2を乗じた数値。以下「防火設備保有遮炎時間」という。)(単位 分)
この表に記載されている防火設備のうち、(1)大臣認定、(4)特定防火設備、(7)防火設備、(8)その他 の4種類は通常の設計で利用されますが、それ以外の防火設備はあまり馴染みがないと思われます。参考までに、防火設備それぞれの規定について、添付ファイルにまとめています。
Cw(f,st):
避難完了時間に応じ、それぞれ次の表に定める火災室部分の当該階段隣接室に面する壁の開口率
tfr(w):
当該壁の構造に応じ、それぞれ次の表に定める時間(火災部分にスプリンクラー設備等が設けられている場合にあっては、同表に定める時間に2を乗じた数値。以下「壁保有遮炎時間」という。(単位 分)
お気付きかと思いますが、これとほぼ同じ表が、前コラム(31)徹底解説「煙高さ判定法」 第15回 全館煙層下端高さ(2)でも登場していました。階段隣接室の煙層下端高さを求める際のポイントであるtfr(room)(火災部分保有遮炎時間)のリストの「当該壁の構造」に「その他のもの」の項目が加えられているだけです。
Bw(f,st):
火災部分の当該階段隣接室に面する壁の幅(単位 m)
Hw(f,st):
火災部分の当該階段隣接室に面する壁の高さ(単位 m)
ρroom(f):
次の式によって計算した避難完了時間が経過した時における火災部分の煙層密度(以下単に「火災部分の煙層密度」という。)(単位 kg/㎡)
∆Troom(f):
火災部分の内装仕上げの種類に応じ、それぞれ次の表に定める避難完了時間が経過した時における火災部分の煙層上昇温度(以下単に「火災部分の煙層上昇温度」という。)(単位 度)
火災部分の煙層密度を算定する際、階検証では内装の種類に応じた火災室燃焼抑制時間から煙層上昇温度を算出する必要がありますが、全館検証では、内装の種類に応じた煙層上昇温度が示されています。
火災部分の排煙量
Eroom(f):
火災部分に設けられた限界煙層高さ有効開口部(壁又は天井に設けられた開口部の床面からの高さが限界煙層高さ以上の部分をいう。以下同じ。)の種類に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した火災部分に設けられた各限界煙層高さ有効開口部及び当該限界煙層高さ有効開口部の開放に伴い開放される火災部分に設けられた他の限界煙層高さ有効開口部のうち当該限界煙層高さ有効開口部からの距離が30メートル以内であるもの(以下「他の限界煙層高さ有効開口部」という。)の排煙量の合計のうち最小のもの(火災部分に設けられた限界煙層高さ有効開口部の種類が同表(ニ)に掲げるものである場合にあっては、火災部分に設けられた各限界煙層高さ有効開口部及び他の限界煙層高さ有効開口部の排煙量の合計のうち最小のもの又は火災部分に設けられた給気口(火災部分に設けられた限界煙層高さ有効開口部の開放に伴い開放され又は常時開放状態にある給気口に限る。)の開口面積の合計に550を乗じたもののうち、いずれか小さい数値。以下「火災部分の排煙量」という。)(単位 ㎥/分)
排煙量計算の基本は避難時間判定法と同じですが、煙高さ判定法では、機械排煙の場合は給気口の大きさによって排煙量が左右されることに注意してください。
また、排煙量は火災部分毎に算定するように示されていますが、火災部分を構成する複数の室に排煙設備が設置されている場合、また、無排煙の室が混在する場合、これらの排煙設備を連動して作動させることは通常はあり得ません。よって、排煙量は出火室毎に求め、排煙量が最も小さな室で出火した場合の結果が採用されることになると思われます。
排煙設備の扱いについて、告示の文面からはこれ以上の判断ができません。解説書の発行が待たれます。排煙量の計算に関しても、詳細については今後解析を進める中で分かったことを、随時、別コラムで解説したいと思います。
Aa(room(st),f):
当該階段隣接室に設けられた給気口(火災部分に設けられた限界煙層高さ有効開口部の開放に伴い開放され又は常時開放状態にあるものに限る。)の開口面積の合計(単位 ㎡)
Aa(room(f)):
火災部分に設けられた給気口(火災部分に設けられた限界煙層高さ有効開口部の開放に伴い開放され又は常時開放状態にあるものに限る。)の開口面積の合計(単位 ㎡)
以上、全館煙層下端高さ算定方法の階段隣接室が火災部分に隣接する場合について解説しました。次回は、階段隣接室が火災部分に隣接しない場合の算定方法です。引き続き、できるだけわかりやすく丁寧に読み解いていきたいと思います。
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