Column避難安全検証法使いこなし術

(51)SED活用法(10) 計算設定(ルートB2)解説

2025/07/01

表紙写真.jpg

 SEDの計算設定機能について、今回はルートB2の計算設定項目の解説です。
 実績が少なく不明点の多い煙高さ判定法(ルートB2)に対する解釈は検査機関によって、また審査担当者によって様々です。SEDの計算設定機能は、設定を切替えることで解釈が明確でない部分について調整できるようになっています。

計算設定:ルートB2
物件設定パネル.jpg

居室避難開始時間3分加算判定に非居室を含む【初期設定値:☑オフ】

 煙高さ判定法(ルートB2)居室検証では、当該室に直接出口のない居室内居室が設置されている場合、火災情報伝達の遅れを考慮して、居室避難開始時間に3分が加算されます。SEDではこの時、非居室である居室内居室については3分加算判定に含まれないよう初期設定は□オフとしています。
 この項目を☑オンとすると、居室内居室があればそれが非居室であっても3分加算されます。以下の例では孫室となる居室(3)が非居室であっても、居室(1)の避難開始時間に3分が加算されるようになります。

居室内居室.jpg

居室出口から階出口に至る経路を居室避難経路等の部分全体で捉える【初期設定値:☑オフ】

 煙高さ判定法(ルートB2)居室検証では、居室出口から階出口までの経路を明確にして避難途上のネックを考慮した上で出口通過時間を算定します。この項目を☑オンとすると、階出口からの経路を11つみるのではなく、居室避難経路等の部分全体を捉えた上で最も流動係数が小さくなる部分から出口通過時間を求めます。極端にバランスの悪い扉レイアウトでない限り安全側の検証となりますが、設定には防災計画に関する十分な知識が必要となるため、初期設定は□オフとしています。
避難経路の扱い.jpg

 上図の計画で、居室に設置されるD1・D2扉を出た後の経路について、Rneck(room)を求めるにはどの方向に何人避難するか決める必要があります。ところが告示475号には居室からの出口となる扉数と居室避難経路等の部分からの出口の扉の数が一致しない場合の割り振りについて明確なルールが定められていません。
 防災評定であれば、専門の先生方の意見をもとに、最も不安全になる割り振りを考え、委員会で検討されます。しかし、検査機関の審査担当者にはそこまで専門知識がないことが多く、不慣れな設計者との言葉尻を捉えるだけの議論の果てに、本来の防災計画で考慮されるべき事項が無視された結論に陥りかねません。
 そこで役立つのがこの機能です。この機能を☑オンにすることで、自動的に防火計画の基本に従った簡易な検証を行うことができます。居室からの出口は合算して1つの扉とし、同様に居室避難経路等からの出口も合算して1つの扉として扱います。要は、居室避難経路等を1つの経路として捉え居室からの出口は1ヶ所、居室避難経路等からの出口は1ヶ所としてまとめて計算します。この方法のメリットは、居室からの出口となる扉数と居室避難経路等の部分からの出口の扉数の不一致に左右されないこと、扉毎に必要なAcoが居室避難経路全体の面積となるので扉毎の負担範囲を決める必要がないことです。
・出口を合算して検証
出口合算の計算.jpg・出口毎に検証
出口毎の計算.jpg

 居室からの出口となる扉数と居室避難経路等の部分からの出口の扉数が不一致の場合、「室以外歩行経路」を入力します。どの扉からどの扉に向かって避難するのかを指定しAco面積の入力も必要になります。設定によって結果が大きく異なる可能性がありますのでしっかり勉強した上で操作するようにしてください。

室外歩行経路.jpg

 告示475号を素直に読むと合算で計算をするように読み取れるため、SEDでは合算による検証を推奨しています。ところが、2024年3月に開催された日本建築センター主宰の講習会では、従来の防災評定と同様、出口毎での計算方法を説明されていました。正式な解説書の発行が待たれるところです。

居室天井高さ検討設定【初期設定値:1,000mm幅、100mm毎】

 ルートB1での計算設定の「居室煙降下時間天井高さ検討設定」と同様の設定で、居室天井高さ検討グラフに表示される天井高さを中心に「天井高さの幅」を設定します。

 天井高さの幅グラフ.jpg

居室避難完了時間検討設定【初期設定値:30秒幅、5秒毎】

 ルートB1での計算設定の「居室煙降下時間天井高さ検討設定」と同様の設定で、居室避難完了時間と煙層下端高さ検討グラフに表示される「避難完了時間の幅」を設定します。

 避難時間の幅グラフ.jpg

火災室と間仕切壁が準不燃構造(準不燃)かつ10分間防火設備の場合、火災室隣接部分で煙層下端高さの計算を省略する(避難経路等を除く)【初期設定値:オン】

 階検証で火災室との間仕切壁が準不燃構造(準不燃)かつ10分間防火設備の場合、火災室隣接部分で煙層下端高さの計算を省略します。
 この設定は、火災室との間仕切壁が準不燃構造(準不燃)かつ10分間防火設備の場合、火災室隣接部分での煙上昇温度が小さく、計算するまでもなくZfloor=1.8となることが明白であることから設けられています。計算量を減らせるため、検証にかかる計算時間が短縮できます。

避難経路の有効幅算定ルール【初期設定値:100mm

 避難経路に当たる室の設計壁芯幅から有効幅を算出する時のマイナス寸法を設定します。ここで部分的に壁芯幅が極端に狭くてその幅を無視したい場合には「最小幅が○○mm以下の部分を無視する」を☑オンとし、無視する幅を入力します。

 煙高さ判定法(ルートB2)は施行から3年になる現在(20252)も正式な解説書は発行されておらず、検証方法については告示を読み解くしかない状態です。弊社では独自の解析によって階避難安全検証法についてはSEDによる検証を可能にしました。この連載でも第17回~第34回で徹底解説しておりますので、今一度お読みいただければ幸いです。

 さて、次回からは、各種SEDオリジナル機能について解説します。

 株式会社九門が開発したSEDは、避難時間判定法(ルートB1)の検証で入力したデータを、検証方法を切り替えるだけで煙高さ判定法(ルートB2)でも検証可能です。データの入力はCAD感覚で簡単です。ぜひ、30日間無料トライアルをお試しください。

本コラムで用いたSED Ver3.1.33.3

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