(50)SED活用法(9) 計算設定(ルートB1)解説
2025/06/15
SEDの計算設定機能について、前回まではルートB1・B2に共通する項目について解説してきました。今回はルートB1の各項目を解説します。やや細かい説明となりますがしっかりと理解しSEDを使いこなしていただきたいと思います。
計算設定:ルートB1

全館避難計算から除外した室を含めて全館避難開始時間を求める【初期設定値:☑オン】
全館避難安全検証法(旧告示1442号)では、避難階で直接地上へ通ずる室は全館避難安全検証法の検証対象から除外すると解釈されていたものが、告示511号では、出口通過時間計算では除外するが、避難開始時間では除外しないと明記されたため設けた項目です。(以下、告示511号より)
Afloor:
当該火災室の存する階(以下「出火階」という。)の各室及び出火階を通らなければ避難することができない建築物の部分の各部分の床面積(単位 ㎡)
Aroom:
避難階以外の階からの主たる避難経路である地上への各出口(当該火災室が避難階以外の階からの主たる避難経路である地上への出口を有する場合においては、当該火災室の避難階以外の階からの主たる避難経路である地上への出口のうち、その幅が最大のものを除く。以下このハにおいて単に「地上への各出口」という。)を通らなければ避難することができない建築物の各部分の床面積(単位 ㎡)
下図のような避難階を例とすると、SEDの設定、Afloor、Aroomの範囲、出口の扱いは以下のようになります。
・階段から前室→廊下(1)→TD03の避難を考える場合
SEDの設定
居室(1)のプロパティで「全館避難計算から除外」を☑オン
物件設定/検証/計算設定/ルートB1
「全館避難計算から除外した室を含めて全館避開始時間を求める」を☑オン
Afloorの範囲:
居室(1)含まれる(全館避難開始時間の算定に含まれます。)
Aroomの範囲:
居室(1)含まれない(全館出口通過時間の算定に含まれません。)
TD01・TD02:
利用されない(全館出口通過時間算定に用いられません。)
・階段から前室→居室(1)→TD01・TD02の避難を考える場合
SEDの設定
居室(1)のプロパティ:「全館避難計算から除外」を☑オフ
物件設定/検証/計算設定/ルートB1
「全館避難計算から除外した室を含めて全館避難開始時間を求める」は☑オン/オフ、いずれも可(検証には影響しません)
Afloorの範囲:
居室(1)含まれる(全館避難開始時間の算定に含まれます。)
Aroomの範囲:
居室(1)含まれる(全館出口通過時間の算定に含まれます。)
TD01・TD02:
最も幅の大きなTD01は通過時間算定に用いられない。TD02は算定に用いられます。
階出口が設置されている室とその他室のみで階避難経路を計算する【初期設定値:☑オン】
避難安全検証法では、階出口が設置された火災室で出火した場合、階出口の1つを火災のために利用できないものとして検証します。そのため、火災室に階出口が設置されているかどうかで避難方向が大きく変わります。
計算設定のこの項目は、階の出口が設置されていない室は「その他出火室」としてまとめ、「階の出口が設置されている出火室」及び「その他出火室」を火災室として階避難経路を作成することで、計算量を少しでも減らすための機能です。下図のような物流センター等の計画で☑オンとするととても効果的です。
☑オフとすると、計算量は多くなりますが、結果が理解しやすい形で表示されます。防災計画の基本が守られ、必ず、居室→第一次安全区画→階出口というルートで避難可能な計画では、☑オフとされることをお勧めします。
添付の「階避難経路.seda」で動作の確認ができます。☑オン/オフを切替えて、その違いをご確認ください。
全ての居室から階出口に通ずる経路がない場合、階・全館歩行時間を無限大とする【初期設定値:☑オン】
居室から避難の用に供する部分に出た後、避難に不適切なルートを通らなければ階出口に到達できない場合(例:居室→廊下(避難経路等)→火災室(居室含む)→階出口)、階・全館歩行時間は∞と表示されます。避難時間判定法(ルートB1)の大きな問題点である、不適切な避難ルートが制限されないことを示すための機能です。
SEDの仕様では、避難経路等と設定された室から火災室を経由しての不適切な避難経路は作成されません。すると居室(1)からの経路が最長歩行経路になるにも関わらず経路は作成されず、居室(2)からの経路が検証計算に採用されてしまいます。
不適切な経路が存在し、最長歩行経路が作成されていない場合、歩行時間を∞として表示し、検証に問題があることを知らせます。
居室煙降下時間天井高さ検討設定【初期設定値:200mm幅、50㎜毎】
居室検証で安全性能が確認できる天井高さを表示する機能のチェック幅と検討ピッチを設定します。
入力された室オブジェクトの天井高さは2,500mmで、上下幅200mm、検討ピッチを50mmとした例(初期設定値)です。天井高さを2,400mmまで下げられることを示しています。
出火室からの煙伝播室数を制限【初期設定値:8室】
出火室から設定した室数までの煙伝播計算を行います。
SEDは、制限なく全ての室への煙伝播計算を行うことが可能です。ところが物流倉庫のように、室がマトリックス状に配置され階出口が多数設置されているような計画では、煙伝播室数が非常に多くなり、計算に時間がかかり、PCのメモリを多量に使用します。すると、その結果の多くは検証結果にさして影響しないにもかかわらず、搭載メモリ量が少ないPCではオーバーフローし計算が途中で止まってしまうこともあります。
そうならないよう、この項目で室数を設定し、計算量を制限することによって、必要な検証結果をスピーディーに得られるようにします。
出火室毎の煙伝播経路数を制限【初期設定値:10経路】
出火室から設定した経路数までの煙伝播計算を行います。
出火室からの煙伝播室数を制限するのと同様、経路数を設定し、計算量を制限することによって、必要な検証結果をスピーディーに得られるようにします。
最上階においてELV・DS・吹抜への煙伝播を全館煙降下時間から除外【初期設定値:☑オフ】
告示511号によらない検証を行う大臣認定(ルートC)でSEDを利用する時に施行令に定められた基準で検証を行うためのものです。ルートB1では☑オフのままで使います。
全館煙降下時間は、建築基準法施行令第129条の2 第4項1号ハに以下のように定められています。
当該建築物の各階における各火災室ごとに、当該火災室において発生した火災により生じた煙又はガスが、階段の部分又は当該階の直上階以上の階の一に流入するために要する時間を、当該階の各室の用途、床面積及び天井の高さ、各室の壁及びこれに設ける開口部の構造、各室に設ける排煙設備の構造並びに各室の壁及び天井の仕上げに用いる材料の種類並びに当該階の階段の部分を区画する壁及びこれに設ける開口部の構造に応じて国土交通大臣が定める方法により計算すること。
ここで注意が必要なのは、告示511号では「直上階以上の階の一に流入するために要する時間」部分を「竪穴に煙が流入するために要する時間」という部分です。施行令に定められた基準では、最上階での竪穴への煙の流入は、上の階がないので全館煙降下時間には当たりませんが、告示511号に定められた方法では全館煙降下時間に該当します。SEDの仕様は告示511号に従った検証を行うので全館煙降下時間は「竪穴に流入ために要する時間」としています。
吹抜から他の階に煙が流入する時点を全館煙降下時間とする【初期設定値:☑オン】
竪穴で出火した場合の全館煙降下時間について、告示511号では「竪穴に煙が流入するために要する時間」とされているため、0分となってしまいます。ところが、階段教室や劇場のように複数階に渡り床に傾斜のある建物での全館避難安全検証法の利用は認められています。この項目を☑オンとすると、そうした場合に「当該階の直上階以上の階の一に流入するために要する時間」が計算できます。
煙伝播経路上で、煙発生量より排煙量の方が多い場合、煙伝播量を0㎥/分とする【初期設定値:☑オフ】
室煙降下時間は、以下の式で求めます。
Aroom(floor):当該室の床面積(㎡)
Hroom(floor):当該室の基準点から天井までの高さの平均(m)
Hlim:限界煙層高さ(m)
Vst(floor):当該室の煙発生量(㎥/分)
Ve(floor):当該室の有効排煙量(㎥/分)
この計算式では、分子は蓄煙体積を、分母は実質の煙発生量を算出します。この時、煙発生量よりも有効排煙量の方が大きい場合、煙発生量は0.01として計算します。
煙発生量がプラスで、有効排煙量の方が大きい場合の計算としては、結果がマイナスにならない工夫と捉えられます。ところが、煙発生量がプラスで、有効排煙量の方が大きい室からの煙伝播がある場合、実質の伝播量がゼロであるにもかかわらず、煙降下時間が算定されるのはおかしな結果だと感じられます。☑オンとすると、そこは∞と表示されます。
☑オフの場合
今回は計算設定(ルートB1)の項目について解説しました。次回はルートB2に関する設定項目について解説します。
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本コラムで用いたSED Ver3.1.33.3
本コラムで使用したSEDファイル
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