Column避難安全検証法使いこなし術

(65)徹底解説「避難時間判定法」 第3回 居室歩行時間

2026/02/10

  • 避難時間判定法(ルートB1)

表紙写真.jpg

 今回は「居室歩行時間」について解説します。「居室避難完了時間」の構成要素のひとつ「居室歩行時間」の算定は、一見単純なようで、経路設定や歩行速度の扱いなどに複数の解釈が存在し、検査機関によって判断が分かれることも少なくありません。

居室歩行時間とは

 居室歩行時間は、国土交通省告示510号には以下ように示されています。
ロ 次の式によって計算した在室者が当該居室等の各部分から当該居室の出口(当該居室から直通階段(避難階又は地上に通ずるものに限り、避難階にあたっては地上。以下同じ))(当該直通階段が令第123条第3項に規定する特別避難階段である場合にあたっては、当該直通階段への出口を有する室を同項第三号、第四号、第六号及び第九号(これらの規定中バルコニー又は付室に係る部分に限る。)並びに第十号(バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口に係る部分に限る。)に定める構造としたものに限る。以下同じ。)に通ずる主立る廊下その他の通路に通ずる出口に限る。以下同じ。)の一に達するまでに要する歩行時間のうち最大のもの(単位 分)

 数式1.jpg

ttravel(room),i
在室者が当該居室等の各部分から当該居室の出口の1に達するまでに要する歩行時間(単位 分)
lroom
当該居室等の各部分から当該居室の出口の1に至る歩行距離(単位 m)
v:
建築物の部分の用途及び種類並びに避難の方向に応じ、それぞれ次の表に定める歩行速度(単位 m/分)

 すなわち、居室歩行時間とは、居室(およびその居室を通らなければ避難できない室)内の各部分から、居室の出口までの歩行距離を基に算出された歩行時間の最大値です。
 要は、最も長い歩行距離を歩行速度で除した歩行時間がその居室の歩行時間となるのですが、歩行経路の設定について告示上には明確な基準がなく、また歩行速度についても居室内の用途が単一か否かによって扱いが異なるため、注意が必要です。

歩行経路の基準

 歩行経路の引き方について告示上では明確な基準が示されていません。
 2001年度版『避難安全検証法とその解説及び計算例とその解説」(以降:旧解説書)にも説明がなく検査機関ごとに判断が分かれ混乱を極めていたところ、ようやく20233月出版の避難安全検証法の公式解説書『避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説』(以降:解説書)で経路の取り方に関する基準が示されました、ところが、2か所に異なる記述が存在します。
P51(区画避難安全検証法の解説) 『歩行距離の起点は、壁芯から1m離れた位置とする。また、歩行経路は直角歩行を原則とする。』
P66(階避難安全検証法の解説) 『歩行距離の起点は、壁芯から1m離れた位置とする。また、歩行経路は直角歩行とする。』
 P51の「~を原則とする」とP66の「~とする」では意味合いが異なります。後者では直角歩行以外が認められないとも解釈されかねません。そのため、同一の建築計画でも、適用する検証法によって検査機関の判断が分かれる恐れがあります。

直角歩行とは

 「直角歩行」とは壁面に対して垂直・平行方向の折れ線経路を用いる方法です。具体的には以下のような経路となります。
歩行経路.jpg

 仕様設計での歩行距離計測では部屋を横切る斜めの経路が認められますが、避難安全検証法では、室内に家具等の設置を想定して、壁に対して垂直平行な経路を用います。この手法は、防災評定の避難計算で長年用いられており、防災設計者にとっては馴染みの深いものです。そのため旧解説書では説明が省略されていたと考えられます。

複数の出口が設置されている場合

 解説書P67には以下のように記されています。
(居室の出口に至る歩行距離の簡易な求め方)
・各出口から避難しようとする在室者の位置を想定し、基本的に1つの出口だけを含むように、居室内を複数の領域に分割する。
・領域ごとに、対応する出口までの歩行距離の最大値を求める。
・全ての領域のうち、出口までの歩行距離が最大であるものを、居室の出口に至る歩行距離の最大とみなす。
 ただし、ここには領域の分割方法は明記されていません。
 25年前、避難安全検証法が施行された際に開催された国土交通省主催講習会(2000年)では、複数の出口がある場合、防災評定と同様、各扉間の垂直二等分線によって領域を分け、その範囲で最大歩行距離を求める方法が説明されていました。この方式が現行解説書で省略されている理由は不明ですが、一般にはこの手順に従うのが妥当です。
凸形の平面形状における按分図を示します。
領域按分.jpg

 しかし、扉同士が見通せない場合には領域に空白部分ができる等、不合理な按分となる欠点があります。凹形の平面形状では、見通せない扉同士の間に垂直二等分線部分が引かれるため、目の前に扉があるにも関わらず視界に入らない扉に向かって避難することになります。
 下図の例では、この問題が最長歩行経路に影響を与えていないため検証には問題ありませんが、最長歩行経路に影響する場合、実際の避難を予測した経路にする必要があります。
領域按分(2).jpg

居室内に歩行速度の異なる部分がある場合

 居室内に、部分によって異なる用途が混在する場合、その部分に応じた歩行速度で歩行時間を算定します。
 例えば、下図のように居室内に階段がある室では、歩行速度は以下のようになります。
歩行速度の違う部分.jpg

起点→a点:78m/
a点→b点:35m/(階段上り)
b点→c点:78m/
c点→d点:47m/(階段下り)
d点→扉:78m/
歩行速度.jpg

 以上、居室歩行時間の算定については、前回取り上げた居室避難開始時間と同様、告示に示された検証方法には曖昧な部分があり、慎重な検証が求められます。最新の公式解説書を踏まえつつ、避難行動の実態を考慮した合理的な経路設定が重要です。

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