Column避難安全検証法使いこなし術

(68)徹底解説「避難時間判定法」 第6回 居室避難完了時間を短くする方法

2026/04/10

  • 避難時間判定法(ルートB1)

表紙写真.jpg

 ここまでの学びで居室避難完了時間を自分で算出できるようになったはいいが、居室避難安全性能が確認できなくなったらどうするか。安全性能を確認するには居室避難完了時間を居室煙降下時間よりも短くしなくてはいけません。今回は居室避難完了時間を効率よく短縮する方法について、徹底的に解説します。

仕様設計では問題がないのに、避難安全検証法では問題が生じるのはなぜか

 仕様設計は、第二次世界大戦後、国土復興を早急に進める必要性から、過去の経験や実績に基づき体系化されたに過ぎず、必ずしも工学的根拠に基づいて構築されたものではありません。それに対し、避難安全検証法は、仕様設計を補完する目的で示された防災計画指針をベースとし、工学的知見に基づいて構築された検証方法です。
 このため、両者が100%整合することはなく、むしろ仕様設計で許容されていた事項について、避難安全検証法では修正や見直しが求められることが少なくありません。例えば、避難経路となる廊下に面する扉は防火設備とする必要があることや、室の蓄煙量に応じて排煙設備の規模を調整する必要がある、等々、より合理的・定量的な検討が求められます。
 よって、仕様設計で進めた計画にそのまま避難安全検証法を適用すると、無理が生じるだけでなく、結果として歪な計画になってしまうのです。
 避難安全検証法を適用しても問題が生じない工夫を計画初期段階から感覚的に織り込めるようになるには、知識だけでなく相当の経験が要されます。そこで、ここでは、検証計算を行った結果を踏まえて修正する方法を考えます。在館者を少しでも早く室外に避難させるために、避難開始時間、歩行時間、出口通過時間について、それぞれ短縮する方法を解説します。

避難開始時間を短くする

 避難開始時間は室面積を根拠に算定するため、室面積を縮小しない限り短くなりません。例外は、居室内居室が設置されている場合です。居室内居室を除外すれば避難開始時間ばかりか、歩行時間、出口通過時間も短縮できます。
 1の計画でその効果を確認します。
居室内居室.jpg図1

2は室1の居室内居室で、室1の居室検証はNGになっています。

避難開始時間 歩行時間 出口通過時間 避難完了時間 煙降下時間 判 定
0.4083 0.2821 1.1574 1.8478 0.6674 NG

 室2を室1の居室内居室とならないように室2から直接廊下に通じる扉を設置します。
すると室1の居室検証はOKとなります。
居室内居室対策.jpg図2

避難開始時間 歩行時間 出口通過時間 避難完了時間 煙降下時間 判 定
0.3334 0.1554 0.0915 0.5803 0.6674 OK

 出口を設置して居室内居室を除外したのは避難開始時間を短くするのが目的でしたが、同時に出口通過時間が非常に短くなりました。これは有効出口幅が広くなったことによる効果です。有効出口幅については後述の出口通過時間の項目で詳細を解説します。

歩行時間を短くする

 仕様設計では特に意識しない室内歩行距離が、避難安全検証法では居室避難完了時間に関わります。出口までの歩行距離が長くならないよう、出入口は分散して設置するなど、配慮が必要です。

出口通過時間を短くする

・有効出口幅の確認
 有効出口幅は、出口の近傍で発生した火災の影響を加味した上で避難に利用可能なものを算出します。在館者が出口へ至る時間が長くなると、火災の成長により、避難に利用可能な出口幅はより小さくなる可能性があります。
 図1の計画で確認します。
表1.jpg

 火災の成長が、在館者が出口に到着する時間より早いため、有効出口幅を算定して出口幅0.85に対して有効出口幅は0.18と非常に小さくなっています。有効流動係数は90と最大ですが、1分当たりに出口を通過できる人数が90×0.18=16.2人と少ないために、出口通過時間は、1.1574分と非常に長い結果となりました。
 同様に、居室内居室を除外した図2の計画で確認します。

表2.jpg

 火災の成長が、在館者が出口に到着する時間より早いことは変わりませんが、差が小さくなったため、有効出口幅は出口幅0.85に対して有効出口幅は0.668と設置出口幅と大きく変わらなくなりました。その結果、有効流動係数は90×0.668=60.12人と大きくなったので出口通過時間は、0.0915分と大幅に短くなりました。
 有効出口幅が小さくなっている場合、避難開始時間、歩行時間を短くすることは効果的です。また、室の用途を見直し積載可燃物の発熱量が小さくできればαf、内装を不燃とするとαmが小さくなりますのでtreach(room)との差が小さくなり有効出口幅は大きくなります。

・有効流動係数の確認
 避難経路等に避難者が収容可能な場合、有効流動係数は最大の90ですが、収容できない場合、滞留を評価して有効流動係数が低減されることは(67) 徹底解説「避難時間判定法」 第5回 居室出口通過時間()で解説しました。
有効流動係数.jpg図3

 図3の例では、廊下の収容可能人数は6/0.320人、廊下を利用しなければ避難できない人数は、40人で廊下での避難者は収容できません。よって有効流動係数は、以下の式で求めます。
 式1.jpg
 計算結果は、左項:35.294 右項:70.588となり有効流動係数は70.588となります。
 この時、有効出口幅が火災の影響を受けない場合、Beff0.85Neff×Beff60/分となり、出口通過時間は、40/60=0.6667と算定されます。
 ここで出口通過時間を短くするために、D2扉幅を2倍にすれば出口通過時間は半分にできそうに思うのですが、計算結果は、左項:17.647 右項:35.294となり、有効流動係数が34.285と先の結果の1/2となります。せっかく扉幅を2倍にしたにも関わらず、Neff×Beff =35.294×1.7060/分となり、出口通過時間は、40/60=0.6667と扉を広げる前と同じ結果になってしまうのです。
 避難経路等に避難者全員が収容できない場合、単純に室の出口幅を広げても避難経路等からの出口がネックとなり出口通過時間は短くならないのです。重要なポイントです。
 この結果について計算式を読み解いてみましょう。左項、右項とも変形しそれぞれ詳細に分析します。
【左項】
 式2.jpg

Aco
 当該居室避難経路等の部分の各部分(当該部分が階段室である場合にあっては、当該居室の存する階からその直下階までの階段室(当該居室の存する階が地階である場合にあたっては当該居室の存する階からその直上階までの階段室、当該居室の存する階が避難階である場合にあっては当該居室の存する階の階段室)に限る。)の床面積(単位 ㎡)
an(room)
 当該居室避難敬老等の部分の各部分の種類に応じ、それぞれ次の表に定める必要滞留面積(単位 ㎡/人)

当該居室避難経路等の部分の各部分の種類 必要滞留面積(㎡/人)
階段の付室又はバルコニー 0.2
階段室 0.25
居室又は廊下その他の通路 0.3

p
 在館者密度(単位 人/㎡)

Aload(room)
当該居室避難経路等の部分を通らなければ避難することができない建築物の各部分の床面積(単位 ㎡)

Bneck(room)
 当該出口の幅又は当該出口の通ずる当該居室避難経路等の部分の出口(直通階段又に通ずるものに限る。)の幅のうち最小のもの(単位 m)

Broom
 当該出口の幅(単位 m)

Bload(room)
 当該出口の通ずる当該居室避難経路等の部分を通らなければ避難することができない建築物の部分(当該居室の存する階にあるものに限る。)の当該出口の通ずる当該居室避難経路等の部分に面する出口幅の合計(単位 m)

①最大の有効流動係数は80と設定しています。
②計算対象の扉と避難経路等の出口幅を比較し、計算対象の扉幅よりも避難経路等の扉幅が小さい場合、有効流動係数は小さくなります。
③避難経路等の収容可能人数と利用者数を比較し、避難経路等の収容可能人数よりも利用者数が多い場合、有効流動係数は小さくなります。
 避難者全員を収容できないことがこの計算式を利用する前提となっているので、常に1未満となり、有効流動係数を大きくするためには、以下の点に注意する必要があります。
・避難経路等の出口幅は、計算対象の扉幅以上となるようにする。最大1
・避難経路等の収容可能人数が少しでも多くなるよう面積を確保する。最大1未満

【右項】
 式3.jpg

①最大の有効流動係数は80と設定しています。
②避難経路等を通らないと避難できない扉幅の合計よりも避難経路等の出口幅、居室の出口幅が小さい場合、有効流動係数は小さくなり、以下の点に注意する必要があります。
1つの避難経路等を通らなければ避難できない複数の居室からの出口を設置しないようにする。最大1

 防災計画の基本は避難経路上にネックを設けないことですが、避難安全検証法では、室の出口幅を広げても出口通過時間は必ずしも短くならないことを、具体例で説明します。
 下図では、室1・室2からの出口幅の合計よりも、避難経路等からの出口幅を大きくしました。
ネック.jpg

 ところが「Bneck(room)当該出口の幅又は当該出口の通ずる当該居室避難経路等の部分の出口(直通階段又に通ずるものに限る。)の幅のうち最小のもの」とされているため、この例における避難経路等からの出口幅は、評価されるどころか、逆に、有効流動係数が小さくなってしまいます。納得できない結果です。
 次に示すのは、避難条件は同じなのに、出口通過時間が大きく違う2つの室の例です。気付いていただきたいのは、避難経路等での他室からの合流がない方が出口通過時間は短く算定されることです。
検証比較.jpg

1aの出口通過時間
室1aの出口通過時間.jpg

1bの出口通過時間
室1bの出口通過時間.jpg

以上より、出口通過時間を短縮するために重要なポイントは次の2つにまとめられます。
・避難経路等に避難者全員を収容できるようにする。できない場合は避難経路上にネックを作らないようにする。
・有効出口幅に火災の影響が及ばないようにする。

 本サイトの「避難安全検証法について」では、避難安全検証法の基本的な考え方や仕組みを解説しています。まずはこちらをご覧いただき、基礎的な知識を身につけてください。
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