Column避難安全検証法使いこなし術

(70)徹底解説「避難時間判定法」 第8回 排煙設備の適用除外

2026/05/20

  • 避難時間判定法(ルートB1)

表紙写真.jpg

 避難安全検証法では、安全性能が確認できるのであれば排煙設備の設置は必須でなくなります。その一方で、安全性能が確認できない場合には、建築基準法上排煙設備の設置義務のない建築物であっても、安全性能を確保するために排煙設備を設ける必要が生じることがあります。
 今回は、避難安全検証法を適用するメリットのひとつである「排煙設備の適用除外」について詳しく取り上げたいと思います。加えて、消防法上の排煙設備と避難安全検証法との関係についても解説します。

仕様設計で要求される排煙設備

○排煙設備が必要な建築物
 建築基準法施行令1262に排煙設備が必要な建築物及び排煙設備が免除される建築物が示されています(添付ファイル参照)。
 以下、要点をまとめます。
・特殊建築物【建築基準法:別表第1()()】で延べ面積が500㎡を超えるもの
 (一)劇場、映画館、集会場など
 (二)病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設など
 (三)学校、体育館、図書館、スポーツ練習場など
 (四)百貨店、展示場、バー、飲食店、店舗など
・階数が3以上で、延べ面積が500㎡を超える建築物
 上記の内、31m以下の部分にある居室で100㎡以内ごとに、間仕切壁、防煙壁によって区画されたものを除く
・排煙上有効な開口部面積の合計が、床面積の1/50以下である居室(=排煙無窓の居室)
・延べ面積が1,000㎡ を超える建築物の床面積が200㎡を超える居室

○排煙設備の構造
 建築基準法施行令1263に排煙設備の構造が示されています(添付ファイル参照)。
 以下、要点をまとめます。
(1)床面積500㎡以内ごとに、防煙壁(H500以上)で防煙区画
(2)排煙口の材料
・排煙口の風道など煙に接する部分は不燃材料で造る
(3)排煙口の設置位置
・天井または壁の上部の天井から80㎝以内(高さの最も短い部分が80㎝に満たない場合は、その高さ)に設置
・防煙区画の各部分から排煙口の一にいたる水平距離が30m以下となるように設置
・直接外気に開放
・排煙風道に直結
(4)手動開放装置の設置
(5)手動開放装置の設置位置
・壁に設ける場合:床面から0.8m以上1.5m以下の高さとする
・天井から吊り下げて設ける場合:床面からおおむね1.8mの高さとする
(6)開放装置の種類及び開口部の構造
・手動開放装置
・煙感知連動自動開放装置
・遠隔操作方式
・開放された場合を除き閉鎖状態を保持
・開放時に排煙気流により閉鎖されない
(7)排煙風道
・施行令115条第1項第三号に定める構造
・防煙壁を貫通するときは、風道と防煙壁とのすき間をモルタルなどの不燃材料で埋める(8)排煙口の開放面積及び設置位置
・排煙口面積は、防煙区画面積の1/50以上
(9)機械排煙
1つの排煙機の開放に伴い自動的に作動
120/分以上の排煙能力
・防煙区画面積1㎡につき1
(10)電源を必要とする排煙設備には、予備電源を設置
(11)中央管理室による監視
(12)その他排煙方式

避難安全検証法による適用除外

○排煙設備が必要な建築物の制限
 建築基準法施行令1262は適用除外となりますので、排煙設備が必要な建築物の制限はありません。よって、避難安全検証法により安全性能が確認できるのであれば建築基準法施行令1262に示される建築物であっても無排煙とすることが可能となります。

○排煙設備を設置する場合の構造制限
 建築基準法施行令1263は適用除外となりますが、告示にはその一部を準用し「自然排煙関係規定」「機械排煙関係規定」として避難安全検証法で排煙設備を設置する場合の構造が定められています。
・自然排煙関係規定
 (2)排煙口の材料
 ・排煙口の風道など煙に接する部分は不燃材料で造る
 (3)排煙口の設置位置(排煙口の壁における位置に係る部分を除く)
 ・防煙区画の各部分から排煙口の一にいたる水平距離が30m以下となるように設置
 ・直接外気に開放
 ・排煙風道に直結
 (4)手動開放装置の設置
 (5)手動開放装置の設置位置
 ・壁に設ける場合:床面から0.8m以上1.5m以下の高さとする
 ・天井から吊り下げて設ける場合:床面からおおむね1.8mの高さとする
 (6)開放装置の種類及び開口部の構造
 ・手動開放装置
 ・煙感知連動自動開放装置
 ・遠隔操作方式
 ・開放された場合を除き閉鎖状態を保持
 ・開放時に排煙気流により閉鎖されない
 (10)電源を必要とする排煙設備には、予備電源を設置
 (11)中央管理室による監視
 (12)その他排煙方式
・機械排煙関係規定
 (2)排煙口の材料
 ・排煙口の風道など煙に接する部分は不燃材料で造る
 (3)排煙口の設置位置(排煙口の壁における位置に係る部分を除く)
 ・防煙区画の各部分から排煙口の一にいたる水平距離が30m以下となるように設置
 ・直接外気に開放
 ・排煙風道に直結
 (4)手動開放装置の設置
 (5)手動開放装置の設置位置
 ・壁に設ける場合:床面から0.8m以上1.5m以下の高さとする
 ・天井から吊り下げて設ける場合:床面からおおむね1.8mの高さとする
 (6)開放装置の種類及び開口部の構造
 ・手動開放装置
 ・煙感知連動自動開放装置
 ・遠隔操作方式
 ・開放された場合を除き閉鎖状態を保持
 ・開放時に排煙気流により閉鎖されない
 (7)排煙風道
 ・施行令115条第1項第三号に定める構造
 ・防煙壁を貫通するときは、風道と防煙壁とのすき間をモルタルなどの不燃材料で埋める
 (8)排煙口の開放面積及び設置位置(排煙口の開口面積に係る部分を除く)
 (9)機械排煙(空気を排出する能力に係る部分を除く)
 ・1つの排煙機の開放に伴い自動的に作動
 (10)電源を必要とする排煙設備には、予備電源を設置
 (11)中央管理室による監視
 (12)その他排煙方式

仕様設計と(自然・機械)排煙関係規定の違いに注意

 仕様設計と、避難安全検証法(ルートB1)で排煙設備を設ける場合とでは、要求される構造が異なる点に注意が必要です。
・防煙区画は1,500㎡以下
 仕様設計での防煙区画は500㎡以下とする必要がありますが、避難安全検証法(ルートB1)では1,500㎡とすることができます。
 防煙区画の面積制限は排煙量の算定に関する部分に記載されているため、排煙設備を設置しない場合には面積制限がないように読み取れてしまうことがあります。しかし、避難安全検証法(ルートB1)を適用する場合、排煙の有無に関わらず、防煙区画は1,500㎡以下とする必要があります。これは、煙が大きな天井面に広がると煙温度が下がり、煙が天井付近に溜められることなく降下することを防ぐためです。
 なお、無排煙とする場合は排煙量の計算を行わないため、防煙垂壁の設置位置は煙降下時間に影響しません。
・防煙垂壁高さは300mm以上
 仕様設計では防煙垂壁高さは500mm以上とされていますが、避難安全検証法(ルートB1)では300mm以上です。規定が緩和されたように見えますが、天井に300mm以上下がった梁等がある場合、防煙垂壁とみなされるため注意が必要です。特に排煙設備を設置する計画では、意図せず防煙区画が形成される可能性があるため、設計段階で十分な確認が求められます。
・複数の自然排煙口は連動開放しなければ加算評価されない
 仕様設計では床面積の1/50以上の有効開口面積の排煙口を設置すれば、それらが同時に開放されるかどうかは問われませんでした。一方、避難安全検証法(ルートB1)では、開口面積に制限はありませんが、連動開放されない排煙口は個別に排煙量を算定し、そのうち最も排煙量の少ない開口部のみが評価対象となります。そのため、多数の排煙口を設置して排煙量を多くしたい場合は、連動開放する必要があります。
・排煙口の設置高さに制限はない
 自然排煙の場合、避難安全検証法では、Hlim(限界煙層高さ)以上開口部を排煙口、以下開口部を給気口として排煙量を計算します。よって、設置高さに制限はなく自由な高さに設置することができます。
・給気口の有無
○自然排煙の場合
 告示510号二号イ
 「自然排煙規定」に適合し、かつ、当該居室の壁の床面から高さが1.8メートル以下の部分に排煙口の開放に連動して自動的に開放され又は常時開放状態にある給気口が設けられたもの...(以下略)
 とあります。しかし、排煙量の算定式に給気口が設置されない場合の計算方法が示されていますので給気口は必要ではありません。但し、天井に設けられた水平の有効開口部は給気口を設置しなければ排煙量は0と算定されます。
○機械排煙の場合
 告示510号二号イ
 「機械排煙規定」に適合し、かつ、当該居室の壁の床面から高さが1.8メートル以下の部分に排煙口の開放の連動して自動的に開放され又は常時開放状態にある給気口が設けられたもの...(以下略)
 とあり、給気口の設置が要求されています。
 但し、給気口の構造や大きさ(性能)について、具体的な規定はありません。任意の大きさのものを設置すればよいと考えられます。
 何らかの基準を設けるなら、大臣認定(ルートC)で議論されるように、排煙機が作動することで室内が負圧になっても避難口の開放に支障がないように給気口を設置することが妥当と思われます。

○給気口の大きさの算定方法
 排煙効率をよくすることが給気口の設置目的ですが、過大な給気口は煙の拡散を招く恐れがあります。そこで、扉が開放障害を起こさない最小限度の大きさとすることが望ましいと考えられます。一般に扉の開放に要する力は成人男子で150Nが限度とされ、老年女子(60~75歳)では91Nです。よって、不特定多数の利用が見込まれる建物では扉開放力を90N程度に抑えるようにします。
 以下に開放力を90Nとした場合の計算例を示します。
式1.jpg

   F = F 1 ∕ 2 + F 2
    F:扉開放力(=90N)
    F1:扉前後差圧による力(N)
    F2:ドアチェックの回転力(=50N)
   90 = F 1 / 2 50 ∴F 1 = 80

   F1 = ΔP × At
    ΔP:扉の前後差圧(Pa)
    At:扉の面積

   一般的に利用される大きさとして900×2,100のものを想定すると、扉の面積は1.89㎡
   80 = ΔP ×1.89  ΔP = 42.32(Pa)

   排煙能力、給気口と扉前後差圧の関係式は

   式2.jpg

   ρ:空気密度(=1.2kg/㎥(20℃))
   Q:排煙風量(㎥/s)
   α:流量係数(=0.7)
   Aa:給気口面積(㎡)

   Aaを求める式に変形

   式3.jpg

   室面積200㎡とし、仕様規定で要求される排煙量200㎥/min(3.33㎥/s)とすると

   式4.jpg

避難安全検証法で無排煙とできても消防排煙の設置は必要

 避難安全検証法による適用除外範囲は、あくまで建築基準法に限られます。避難安全検証法を適用しても、消防法で規定される消防排煙は無くすことはできません。消防排煙が必要な建築物は本サイト内FAQ消防法による排煙設備設置基準について」をご参照ください。
 また、消防排煙を設置する場合は、建築基準法施行令1263に適合させる必要があります。これは、消防排煙の排煙口の構造が建築基準法施行令1263を根拠として定められているためです。そのため、避難安全検証法を適用しても、排煙設備の構造については避難安全検証法の自然排煙関係規定を用いることはできません。

 本サイトの「避難安全検証法について」では、避難安全検証法の基本的な考え方や仕組みを解説しています。まずはこちらをご覧いただき、基礎的な知識を身につけてください。
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