(76)徹底解説[避難時間判定法] 第14回 階避難開始時間
2026/09/20
- 避難時間判定法(ルートB1)
今回は「階検証」の第2ステップである「階避難開始時間」の解説です。
階検証では、以下の時間を算出します。
①階避難開始時間
②階の出口に到達するまでに要する歩行時間
③階出口通過時間
④階煙降下時間
これらの数値から、④階煙降下時間よりも、避難完了時間(①避難開始時間+②歩行時間+③出口通過時間)が短いことを確認し、フロア内の在館者が、フロア内で発生した火災による煙やガスに曝されることなく、フロアの外へ安全に避難できることを確認します。
基本的な検証方法は「居室検証」と同様ですが、出火室ではない室の在館者が、出火室から漏れ出た煙に曝されることなく避難できるかを確認する点が、「階検証」の大きな特徴です。
階避難開始時間とは
階避難開始時間は、火災情報が伝達され避難開始を判断して行動に移すまでの時間です。
国土交通省告示510号には以下の通り示されています。
三 令第百二十九条第三項第一号ニに規定する当該階に存する者(当該階を通らなければ避難することができない者を含む。以下「階に存する者」という。)の全てが当該火災室で火災が発生してから当該階からの避難を終了するまでに要する時間(以下「階避難完了時間」という。)は、次に掲げる時間を合計して計算するものとする。
イ 当該階の各室及び当該階を通らなければ避難することができない建築物の部分(以下「当該階の各室等」という。)の用途に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した火災が発生してから階に存する者が避難を開始するまでに要する時間(以下「階避難開始時間」という。)(単位 分)![]()
tstart(floor):
階避難開始時間(単位 分)
Aarea(floor):
当該階の各室等の各部分の床面積(単位 ㎡)
階避難開始時間は、当該階の各室及び当該階を通らなければ避難できない建築物の部分の床面積Aarea(floor)を基に算定します。床面積Aarea(floor)には、日常的に在館者が利用する廊下・ELVホール・便所・洗面室・湯沸室などが含まれ、機械室・各シャフト類・階段部分は含まれません。
火災情報の伝達が必要な部分の面積から算定するのは居室の避難開始時間算定と同様ですが、階検証では、出火室以外の室では火災の発見や避難開始の判断が遅れることを考慮し、就寝用途では5分、それ以外の用途では3分を加算します。
また、検証を簡略化するため、避難安全検証法では出火室・非出火室の在館者が同時に避難を開始するものとして扱います。
階避難完了時間は「階避難開始時間」が支配的
階避難完了時間は、歩行時間や出口通過時間よりも、「階避難開始時間」の影響を大きく受けます。
前回のコラム「(75) 徹底解説「避難時間判定法」 第13回 階避難安全検証法の仕組み」で用いた単純な計画例で確認します。![]()
| 階避難開始時間 | 階歩行時間 | 階出口通過時間 | 階避難完了時間 |
| 3.4714分 | 0.3590分 | 0.2092分 | 4.0396分 |
| 85.9% | 8.9% | 5.2% | 100.0% |
階避難開始時間は、階避難完了時間の85.9%を占めていることがわかります。
これは、避難開始の遅れを考慮して、就寝用途では5分、それ以外の用途では3分を加算する仕組みとなっているためです。上記の例では、階避難開始時間3.4714分のうち、フロア面積によって変動するのは0.4714分のみであり、大半は、建物規模に関係なく加算される3分という時間なのです。
このように、階避難開始時間は「フロア面積+(5分または3分)」によって決まります。そのため、設計上の工夫だけで大幅に短縮することは困難です。
安全性能を確認できない場合に、階避難完了時間と階煙降下時間とが僅差であれば、階歩行時間や階出口通過時間を短縮することで成立する可能性もあるでしょう。しかし、その差が大きい場合には、排煙設備や防煙区画の計画によって階煙降下時間を延長することが、より効果的で重要な対策となります。
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