(61)SED活用法(19) 空間オブジェクトの種類と計算動作の違い
2025/12/01
- SED設定・操作・全般
SEDでは、空間オブジェクトを入力するだけで検証計算に必要な基礎データの入力から検証方法の設定まで自動的に行われます。この空間オブジェクトについて、レファレンスマニュアルの解説が細かすぎてわかりにくい、オブジェクトによる計算動作の違いが今一つ理解できない、といったご意見をいただきました。日々更新する中で拡張された機能も少なくありません。そこで今回は、空間オブジェクトの種類と動作の違いについて改めて整理し、解説いたします。
空間オブジェクトの種類
SEDの空間オブジェクト(建築空間=建物利用者の活動の場となる空間)は「室」「吹抜」「階段」「竪穴」の4種類です。ここで「階段」「竪穴」の2つは竪穴オブジェクト(竪穴=階の上下間を繋ぐ空間)とし、検証上の扱いが異なります。
それぞれの用途と特長は以下の通りです。
| 空間オブジェクトの種類 | 用 途 | 特 徴 |
| 室 | 一般用途 | 床・壁・天井に囲まれた屋内空間 |
| バルコニー | 天井がない屋外空間 | |
| PS・EPS | 検証には影響しない | |
| 吹 抜 | 一般用途 |
多層階に渡る室 全館煙降下時間対象 |
| 階段(竪穴オブジェクト) | - | 全館煙降下時間対象 |
| 竪穴(竪穴オブジェクト) | ELV・DS | 全館煙降下時間対象 |
室(一般用途):
複数階に及ばず1フロア内で、床・壁・天井に囲まれた屋内空間です。避難安全検証法で一般に扱う室に当たります。
空間イメージ
![]()
天井が設置されていますので、煙降下が起こり、煙がHlimに達すると開口部を通じて煙が伝播します。
自室火災による煙の伝播がはじまる迄の時間は
{(天井高さ-Hlim)×室の面積}/煙発生量
で算定します。
告示510号で説明されている「室」がこれに当たります。
室(バルコニー):
天井がない屋外空間です。よって、他室から伝播によるもの、自室火災によるものも煙降下時間は∞(無限大)となります。
自室火災による煙の伝播がはじまる迄の時間は
{(天井高さ(∞)-Hlim)×室の面積}/煙発生量=∞
煙降下時間の計算以外は、室(一般用途)と同じ扱いとなります。
また、屋外空間なので、隣接した室に自然排煙口を設置して排煙計算することが可能です。
空間イメージ
![]()
特別避難階段のバルコニーとして利用することをイメージして作成したオブジェクトですが、屋外であっても、避難完了時間の計算対象とすべきと判断されるのであれば、ホームセンター等の外売場等の空間として利用できます。以下に具体例を示します。![]()
屋外売場は屋根が設置されていないので、室用途を「バルコニー」として入力し、在館者数は売場と同じ0.5人/㎡としています。また、売場(2)の外売場側に排煙窓を設置しています。
計算では以下ように取り扱われます。
・自然排煙窓
自然排煙窓の入力位置は、屋外に面していることが利用条件になり、他の室オブジェクトに面していないことが必要です。但し、面して設置されている室オブジェクトの室用途が「バルコニー」の場合、屋外に面しているものとして扱われます。
・居室検証
「外売場」の結果は、避難完了時間は一般用途の室と同様に計算され、煙降下時間は∞として出力されます。
「売場(2)」の居室計算では、「外売場」は避難経路等と扱われ、滞留を評価した上で有効流動係数を算出します。
・階検証
避難開始時間:
算定根拠となるΣAarea(floor)に屋外売場が含まれます。
歩行時間:
「外売場」に設置された「地上への出口」に達するまでの歩行経路から歩行時間が算定されます。
出口通過時間:
「外売場」に設置された2ヶ所の「屋外門扉」、売場(1)に設置される3ヶ所の「SD2」が地上への出口として利用されます。また、出口が設置された室で出火した場合、その最大幅の扉は利用できないものとして扱いますが、告示510号では屋外での火災を想定していません。「外売場」は非火災室として扱い、2ヶ所の「屋外門扉」を利用できないことを想定した計算は行いません。
※避難安全検証法は建物内部を扱う検証方法です。本来屋外の空間を屋内に取り込んで検証する場合は想定されていません。そのため、屋外での火災を想定して最大幅の扉は利用できないものとすべしとする意見もあると思われます。その場合、地上へ通ずる扉の「屋外門扉」の1ヶ所の属性を「使用不可」として計算してください。
・階煙降下時間
「外売場」には地上への出口が設置されているため、階煙降下時間の計算対象室となります。屋外ですので、煙降下時間は∞として算出されます。
室(PS・EPS):
空間の入力漏れが無いように、パイプシャフトやデッドスペースを埋めるためのオブジェクトです。検証には影響しないため、必ずしも入力する必要はありません。
吹抜:複数階にわたる室
室(一般用途)に竪穴としての要素を加えたオブジェクトです。当該オブジェクトの間仕切壁に設置された開口部から煙が流入する時点を全館煙降下時間として算出します。
入力の際、天井高さの設定に注意が必要です。
例えば、入力時に「吹抜最上階での天井高さ」を2,500とし、配置階を1F~2Fとすると、1階での室の天井高さは、「2,500+物件基本情報で設定された基準階高」と設定されます。この時、2階で吹抜オブジェクトを確認すると、天井高さは2,500、最低床高さは「マイナス物件基本情報で設定された基準階高」床全体がスラブ開口(床なし)と設定されます。詳細はレファレンスマニュアルを参照してください。
竪穴オブジェクト
階段:(直通階段)
非避難階の階出口通過時間算定に必要な階段の有効幅員、有効面積、及び下階までの歩行距離の設定をします。また、階段室への煙流入を全館煙降下時間として算定します。
竪穴:(エレベーター、ダクトスペース)
竪穴シャフトへの煙流入を全館煙降下時間として算定する場合のオブジェクトです。当該オブジェクトの間仕切壁に設置された開口部から煙が流入する時点を全館煙降下時間として算出します。
竪穴区画されたエレベーターシャフトやダクトスペースへの煙流入を全館煙降下時間として算定することの解釈については賛否両論があります。入力の際には検査機関と事前に協議することをお奨めします。
株式会社九門が開発したSEDは、避難時間判定法(ルートB1)の検証で入力したデータを、検証方法を切り替えるだけで煙高さ判定法(ルートB2)でも検証可能です。データの入力はCAD感覚で簡単です。ぜひ、30日間無料トライアルをお試しください。
本コラムで使用したSEDファイル
実際に計算して結果を確認したり、数値を変更すると結果が変わることを体験してください。
建物に携わる皆様へ
永く愛される建物づくりを、
SEDシステムがサポートします
-
ご検討中の方
SEDシステムは全ての機能を30日間無料トライアルでご利用いただけます
チュートリアルが付いていますので、お気軽にお試しください -
ご契約中の方
SEDシステムのダウンロードや各種契約内容の変更
SEDシステムの操作に関するお問い合わせはこちらから