(66)徹底解説「避難時間判定法」 第4回 居室出口通過時間(前編)
2026/03/01
- 避難時間判定法(ルートB1)
「居室避難完了時間」を構成する3つの要素(居室避難開始時間、居室歩行時間、居室出口通過時間)のひとつ、居室出口通過時間について、今回と次回の2回に分けて解説します。
出口通過時間とは
出口通過時間は、国土交通省告示510号には以下のように示されています。
ハ 次の式によって計算した在室者が当該居室の出口を通過するために要する時間(以下「居室出口通過時間」(単位 分)
![]()
tqueue(room):
居室出口通過時間
p:
建築物の部分の種類に応じ、それぞれ次の表に定める在館者密度(単位 人/㎡)
Aarea:
当該居室等の各部分の床面積(単位 ㎡)
Neff(room):
当該居室の各出口の幅、当該居室の種類及び当該居室の各出口に面する部分(以下「居室避難経路等の部分」という。)の収容可能人数に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した当該居室の各出口の有効流動係数(単位 人/分・m)
Beff(room):
当該居室の各出口の幅及び火災が発生してから在室者が当該居室の出口の1に達するまでに要する時間に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した当該居室の各出口の有効出口幅(単位 m)
Σが見慣れない使い方をされていますが、計算自体はシンプルです。分子=「在室者数」を、分母=「1分当たりに出口を通過できる人数」で除することで、全ての在室者が室出口を通過する時間を算出するだけです。ひとつひとつ丁寧に読み解いていきましょう。
・ΣpAarea 分子(在室者数)
在館者密度[1㎡当たりの在館者数]×室面積(室が複数ある場合はその合計)
在室者数は用途毎に定められた在室者密度を用いて算出しますが、その人数より定員の方が多い場合には定員を用います。Σは総合計を意味するため、対象の居室を通らなければ避難できない室(居室内居室)が複数ある場合にはそれらの合計となります。
・∑Neff(room) Beff(room) 分母(1分当たりに室出口を通過できる人数)
有効流動係数[扉有効幅1m当たり1分間に通過できる人数]×有効出口幅[扉幅の内、避難に利用できる幅](扉が複数ある場合はその合計)
Σは総合計を意味するため、対象の居室から居室外に出られる扉が複数ある場合にはそれらの合計となります。
在館者密度について
在館者密度が示されていない用途の室では「その他これらに類するもの」として在室者密度を決定します。在室者密度は必ず告示で定められた数値を利用する必要があり、独自の密度を利用することはできません。![]()
※出典:避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説[日本建築センター発行]
室面積について
室面積は、壁内から算出する有効面積ではなく壁芯より算出したものを利用します。
有効流動係数について
防災計画では避難経路上での避難者の滞留が起こらないように計画し、有効流動係数は常に最大流動係数1.5人/秒・m(90人/分・m)としますが、避難時間判定法(ルートB1)では、居室から避難した空間(避難経路等、例:廊下)に避難者を収容可能か否かによって有効流動係数を求めます。![]()
Aco:
当該居室避難経路等の部分の各部分(当該部分が階段室である場合にあっては、当該居室の存する階からその直下階までの階段室(当該居室の存する階が地階である場合にあたっては当該居室の存する階からその直上階までの階段室、当該居室の存する階が避難階である場合にあっては当該居室の存する階の階段室)に限る。)の床面積(単位 ㎡)
an(room):
当該居室避難敬老等の部分の各部分の種類に応じ、それぞれ次の表に定める必要滞留面積(単位 ㎡/人)![]()
p:
在館者密度(単位 人/㎡)
Aload(room):
当該居室避難経路等の部分を通らなければ避難することができない建築物の各部分の床面積(単位 ㎡)
Bneck(room):
当該出口の幅又は当該出口の通ずる当該居室避難経路等の部分の出口(直通階段又に通ずるものに限る。)の幅のうち最小のもの(単位 m)
Broom:
当該出口の幅(単位 m)
Bload(room):
当該出口の通ずる当該居室避難経路等の部分を通らなければ避難することができない建築物の部分(当該居室の存する階にあるものに限る。)の当該出口の通ずる当該居室避難経路等の部分に面する出口幅の合計(単位 m)
有効流動係数を求める際、当該居室の各出口の幅によって扱いが異なります。
○出口幅が600mm未満の場合
扉毎に確認します。
有効流動係数=0人/分・m。すなわち避難には利用できません。
○その他の場合
・地上への出口を有する場合
複数の扉が設置されている場合、全ての扉を一つにまとめて評価します。
つまり、いずれかの扉が地上へ通じていれば全ての扉の有効流動係数=90人/分・mとなり、最も効率よく避難が行われます。下図の例では扉Bが地上への出口なので、有効流動係数は扉A・扉B共に90人/分・mとなります。![]()
・その他の場合
検証対象の居室に地上へ通ずる扉が設置されていない場合、居室の出口が通じている避難経路等に避難者が収容できるか否かによって有効流動係数を求めます。複数の避難経路等が設置されている場合はひとつにまとめて評価します。
評価式の左辺は、避難経路等の収容可能人数です。
![]()
避難経路等の床面積/1人当たりの必要滞留面積
例えば、10㎡の廊下では、
10(㎡)/0.3(㎡/人)=33.33人
Σは総合計を意味しますので、複数の避難経路等が設置されている場合はそれらの合計となります。
評価式の右辺は、評価対象の避難経路等を利用しなければ避難できない在館者数です。
![]()
Σは総合計を意味しますので、複数の避難経路が設置されている場合はそれらの合計となります。
・検証対象が室Aの場合
室Aの避難経路等は廊下(1)と廊下(2)の2ヶ所です。そこで、この2つの廊下を合わせた空間に、室Aおよび室Bの在館者が収容可能かを確認します。
室Bの在館者も廊下(1)を利用するのは不自然に思えますが、これは「混雑の均等化」の考え方に基づくものです。すなわち、扉Bから廊下(2)に避難者が集中し混雑する場合、避難者はより空いた廊下(1)側へも流れると考え、結果として廊下(1)と廊下(2)の避難者密度が等しくなると仮定します。
防災避難計算のように厳密に考えると、扉A、扉Bの利用者数、廊下(1)・廊下(2)の混み具合、扉A・扉Bの有効流動係数を、それぞれ算出しなくてはなりません。けれども避難時間判定法(ルートB1)では、複雑な避難行動を追跡せず、複数の避難経路等を合算し「ひとつの避難空間」とみなし、有効流動係数をひとつだけ求めるという簡略化を採用しています。
・検証対象が室Bの場合
室Bの避難経路等は廊下(2)のみです。そのため、室Bの在館者が廊下(2)に収容可能かどうかを確認します。
ここでひとつの疑問が生じます。「室Aを検証したときには室Aの在館者が廊下(2)を利用する前提だったのに、室Bを検証するときには利用しないのはなぜだろう?」
それは、検証を簡便に行うために扉利用者数を設定しないからです。
避難時間判定法(ルートB1)では次の考えを前提として検証を行います。
・出火室(検証対象室)の在館者は、利用可能なすべての扉を使う。
・出火室以外の在館者は、出火室へ向かう経路等を利用しなくても避難できるのであれば、その経路には向かわない。
従って、室Bが出火室である場合、室Aの在館者は廊下(1)側から避難できるため、廊下(2)には流入しないと扱うのです。
このように避難時間判定法(ルートB1)では、複数の避難経路がある場合でも、扉ごとの利用割合や避難者の分流を厳密に扱うことをしません。これは避難安全検証法が、数値の厳密さよりも"安全側に""簡便に"評価できることを優先しているためです。戸惑うこともあるでしょうが、避難安全検証法の基本精神を理解し、慣れることがポイントです。
次回は、有効流動係数と有効出口幅についてさらに詳しく解説します。
本サイトの「避難安全検証法について」では、避難安全検証法の基本的な考え方や仕組みを解説しています。まずはこちらをご覧いただき、基礎的な知識を身につけてください。
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