(72)徹底解説「避難時間判定法」 第10回 有効排煙量(1/3)
2026/07/01
- 避難時間判定法(ルートB1)
今回より3回にわたり、居室煙降下時間を積極的に延ばすにあたり非常に重要な数値である「有効排煙量」について解説します。一般的に避難安全検証法が排煙設備を無くす目的で用いられることが多いせいか、有効排煙量についての十分な記述は少ないようです。第1回目は、有効排煙量の考え方について、排煙計算の基本から丁寧に説明します。
避難安全検証法では排煙量も性能によって評価する
仕様設計では、排煙口の大きや設置位置が床面積や天井高さに基づいて決定されます。それに対して、性能設計である避難安全検証法では、排煙口の大きさ・設置高さ、給気口の条件などから定量的に排煙量を評価し、安全性能を確認します。したがって、仕様設計に従った排煙口を設置しただけでは、必ずしも安全性能が確認されるとは限りません。
有効排煙量と排煙降下係数
有効排煙量とは、排煙設備により室外に排出される排煙能力を示す指標であり、防煙区画内において床面から高さ1.8m以上の部分が有する排煙能力に、防煙区画の排煙効率を示す「排煙効果係数」を乗じて表されます。告示では以下のように示されています。
床面積1,500㎡以内ごとに、天井面から30cm以上下方に突出した垂れ壁その他これと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので不燃材料で造り、又は覆われたもの(以下「防煙垂れ壁という」。によって区画された居室(床面から防煙垂れ壁の下端までの高さが1.8m以上の場合に限る。)次の式によって計算した各防煙区画(防煙垂れ壁で区画された部分をいう。以下この号において同じ。)の有効排煙量のうち最小のもの(単位 ㎥/分)
Ve(room),i=A*(room)E(sc)
Ve(room),i:
各防煙区画の有効排煙量(単位 ㎥/分)
A*(room):
防煙垂れ壁で区画された部分(以下「防煙区画」という。)の壁又は天井に設けられた開口部の床面からの高さが1.8m以上の部分(以下「有効開口部」という。)の有無及びその上端の位置に応じ、それぞれ次の表に掲げる式によって計算した当該防煙区画の排煙効果係数![]()
![]()
当該居室の基準点から当該防煙区画に設けられた各有効開口部の上端までの高さの平均(単位 m)
Hw(room):
当該居室の基準点から当該防煙区画における防煙垂れ壁の下端までの高さのうち最大のもの(単位 m)
Htop(room):
当該室の基準点から当該防煙区画内の天井までの高さのうち最大のもの(単位 m)
Asc:
当該防煙区画の床面積(単位 ㎡)
Aroom:
当該居室の床面積(単位 ㎡)
E(sc):
当該防煙区画に設けられた排煙設備に応じ計算した数値(単位 ㎡/分)
排煙量は煙層の厚みが増すほど多くなるため、同一性能の排煙設備であっても有効排煙量は煙層の状態によって変化します。そこで、煙層の蓄積にかかる時間と厚さによる排煙効率を示す排煙効果係数を用いて有効排煙量を求めます。
有効排煙量は、短時間で厚みのある煙層が形成されるほど大きくなります。よって、防煙垂壁を設置して蓄煙部分を分割すると、出火点近くの防煙区画では、煙層は局所的に厚みが増して排煙量は多くなります。防煙垂壁を設置しない場合と設置した場合の排煙量の推移を次のグラフに示します。![]()
煙層が限界煙層に達するまでに排出された総排煙量を、時間当たりの平均排煙量を有効排煙量 とすると![]()
さらに、煙層が限界煙層高さに達した時点での排煙量を とすると、排煙効果係数は、有効排煙量と排煙量の比であるので、![]()
排煙効果係数は、限界煙層高さまで煙層が降下するまでの煙層の形成速度から算出される排煙量の累積時間平均[有効排煙量]を、煙層が限界煙層高さまで形成された時点における最大排煙量で除したものです。よって、煙層の形成が早い形態のものほど限界煙層高さまで煙層が降下するまでに排出される総排煙量が多くなり、排煙効果係数は大きな値となります。
また、防煙区画を設置しない場合、排煙効果係数が最大でも0.4とされているのは、煙降下途中で煙層が薄い時期もあると考えられるため安全率が掛けられているからです。
防煙垂壁の効果について、下図の例で実際に計算を行い、確認してみましょう。
室1には防煙区画を設けていません。一方、室2には、室の面積がちょうど半分になるように高さ500mm(H500)の防煙垂壁を設置しています。防煙区画の有無以外の条件はすべて同一とします。![]()
有効排煙量
室1:6.448㎥/分
室2:7.288㎥/分
自然排煙口の大きさは両室とも同一ですが、防煙垂壁を設置している室2の方が有効排煙量は大きくなります。詳細については、添付のSEDファイルでご確認下さい。
このように、避難安全検証法では、排煙量は排煙口の大きさや設置高さ、給気口の大きさに左右されます。そのため同じ排煙量でも、効率的な設計を行うことで排煙口面積を小さくすることが可能となります。
また、防煙垂壁の効果が排煙の有無によって異なる点にも注目してください。排煙を行う場合には排煙効率を向上するために、排煙を行わない場合には煙温度の低下を防いで煙降下が想定より早くならないための工夫として、防煙垂壁の設置目的が違ってくるのです。
以上が有効排煙量の基本的な考え方です。その上で理解しなくてはならないのは排煙方式による違いですが、次回は、自然排煙方式について説明します。
本サイトの「避難安全検証法について」では、避難安全検証法の基本的な考え方や仕組みを解説しています。まずはこちらをご覧いただき、基礎的な知識を身につけてください。
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