Column避難安全検証法使いこなし術

(73)徹底解説「避難時間判定法」 第11回 有効排煙量(2/3)

2026/07/20

  • 避難時間判定法(ルートB1)

表紙写真.jpg

 前回は有効排煙量の基本的な考え方について解説しました。仕様設計と同じ排煙方式でも構造規定が異なること、排煙を効率的に行えるようにすると排煙量が増やせること、同じ排煙量であれば排煙口面積を縮小できることなど、避難安全検証法を取り入れるメリットがご理解いただけたことと思います。
 今回は避難安全検証法で利用できる排煙方式、自然排煙方式について詳しく解説します。

自然排煙方式

 排煙口の設置規定について、仕様設計と避難安全検証法(性能設計)との差異は「(70)徹底解説「避難時間判定法」 第8回 排煙設備の適用除外」で詳しく解説しました。避難安全検証法では、排煙口の大きさや設置高さの制限はなく、排煙量は開口部の位置や大きさによって以下の算定式を用いて算定します。
(下記の式は、※e(sc)の最小値を採用することを数式で表現しています)
 式1.jpg

As(sc)
 当該有効開口部(自然排煙関係規定に適合する排煙設備にあっては、当該有効開口部の開放に伴い開放される当該防煙区画内にある有効開口部のうち当該有効開口部からの距離が30m以内のものに限る)の開口面積(単位 ㎡)

hs(sc)
 当該有効開口部の上端と下端の垂直距離(単位 m)

A's(sc)
 当該有効開口部及び他の有効開口部の開口面積の合計(単位 ㎡)

Aa
当該居室に設けられた給気口(当該有効開口部の開放に伴い開放され又は常時開放状態にある給気口に限る。)の開口面積の合計(単位 ㎡)

Hc(sc)
 当該居室の基準点から当該有効開口部の中心までの高さ(単位 m)

e(sc)
 当該防煙区画に設けられた各有効開口部の排煙量(単位 ㎥/分)

 給気口が設置されていない場合、右項のAaの数値は0となるのでmaxは左項の計算式の結果となります。一般に室には隙間があり給気口と見なすことも可能ですが、必ずしも給気口として機能しません。考慮せずに密閉されているものとして計算を行います。排煙口の作動と同時に開放される給気口が床面より1.8m以内に設置されている場合は、右項の計算を行い、左項の結果と比較し、数値の大きい方の結果を採用します。

・有効開口部のAs(sc)hs(sc)Hc(sc)各寸法の取り方
 (1)一般的な排煙口
排煙口1.jpg

 (2)壁面に斜めに設置される排煙口
排煙口2.jpg

 (3)排煙ハッチ
排煙口3.jpg

 排煙口が斜めに設置されているhs(sc)の取り方は、開口部の長さではなく、開口部の上端と下端の垂直距離となります。また、天井面に水平に設置される排煙ハッチは、hs(sc)=0となるので、排煙ハッチと連動して開放される有効な給気口を設置しなければ排煙量は0㎥/分となることに注意が必要です。

給気口の有無による排煙量の違い

 室内外の気圧バランスを考えると、排煙口から煙が排出されると室外から空気が供給されるのですから、給気口の有無は排煙量を左右します。
 給気口設置の有無による排煙イメージを以下に示します。給気口を設置しない場合、中性帯が排煙口内に出来るので排出圧力は小さく且つ排出面積が狭いため排煙効率は悪く、給気口を設置すると中性帯は排煙口より低い位置にでき、排出圧力は大きく且つ排出面積が広くなるため排煙効率は良くなります。
給気バランス.jpg

 実際に計算し確かめてみましょう。下記の例は給気口(1㎡)の有無以外、全て同じ条件なのですが、吸気口有の場合は居室検証の安全性能が確認できるのに、吸気口無の場合では安全性能は確認できません。
給気口の有無.jpg

室 名 避難開始時間 歩行時間 出口通過時間 避難完了時間 煙降下時間 判 定
給気口有 0.4714 0.1795 0.3000 0.9509 0.9969 OK
給気口無 0.4714 0.1795 0.3000 0.9509 0.9332 NG

 注目していただきたいのは煙降下時間です。給気口有では排煙効率が良くなるため煙降下時間も長くなります。有効排煙量を算出すると、給気口有の場合は20.392/分、給気口無の場合は8.061/分と大きな差が出ます。詳しくは添付のSEDファイルでご確認下さい。

 避難安全検証法における有効排煙量について、引き続き次回では機械排煙方式、押出排煙方式について解説します。

 本サイトの「避難安全検証法について」では、避難安全検証法の基本的な考え方や仕組みを解説しています。まずはこちらをご覧いただき、基礎的な知識を身につけてください。
 株式会社九門は、避難安全検証法をより身近に、より実務で活用していただくことを目的として、SED(避難安全検証自動計算システム)を開発しました。避難安全検証法の基本を理解していれば、SEDの運用は決して難しくありません。
 SEDでは、避難時間判定法(ルートB1)の検証で入力したデータを、検証方法を切り替えるだけで煙高さ判定法(ルートB2)にもそのまま利用できます。室や開口部をオブジェクトとして扱い、CAD感覚で直感的にデータを入力できる点もSEDの特長です。ぜひSEDを活用し、避難安全検証法を日常の設計業務に取り入れてください。30日間の無料トライアルをご用意しています。ぜひ一度お試しください。

本コラムで使用したSEDファイル

実際に計算して結果を確認したり、数値を変更すると結果が変わることを体験してください。 

建物に携わる皆様へ
永く愛される建物づくりを、
SEDシステムがサポートします

ライセンス購入