Column避難安全検証法使いこなし術

(74)徹底解説「避難時間判定法」 第12回 有効排煙量(3/3)

2026/08/10

  • 避難時間判定法(ルートB1)

表紙写真.jpg

有効排煙量について、3回目の今回は機械排煙方式と押出排煙方式について詳しく解説します。

機械排煙方式

 室面積に応じて排煙能力が定められる仕様設計に対し、避難安全検証法では、安全性能が確認できるのであれば排煙能力を自由に設定することができます。
 この時、給気口の設置が必要となることに注意が必要ですが、給気口の大きさについては明確な規定がありません。そのため、「(70) 徹底解説『避難時間判定法』第8回 排煙設備の適用除外」で解説したように、扉が開放障害を起こさない程度の大きさを基準として検討すればよいと考えられます。
 機械排煙方式の排煙量の算定式を示します。
 (下記の式は、※e(sc)の最小値を採用することを数式で表現しています)
式1.jpg

w(sc)
 当該有効開口部の排煙機により空気を排出することができる能力(単位 ㎥/分)

Hc(sc)
 当該居室の基準点から当該有効開口部の中心までの高さ(単位 m)

 右辺{ }内の左項は、有効開口部の排煙能力です。排煙量は有効開口部の排煙量を超えることはないので上限値としています。排煙量は有効開口部の設置高さと限界煙層高さとの関係(煙層の厚さ)による排煙効率の変化を考慮した右項によって算定します。
排煙効率.jpg

a)では煙層に十分な厚みがあり煙は効率よく排出されます。
b)では煙層に十分な厚みがないため煙と一緒に空気も排出されます。

・排煙効率と煙層厚さの関係(避難安全検証法における設計ポイント)
 排煙量の計算式から最も効率的な排煙口の設置高さを求めてみます。
 有効開口部の排煙能力の100%発揮されるHc(sc)を求めます。設置高さは有効開口部の排煙容量によって変わります。排煙量は有効開口部の排煙量を超えることはありません。
 告示式
 式2.jpg
 において、限界煙層高さが1.8mの場合の左項と右項が等しくなるHc(sc)を排煙量ごとに求めます。
 式3.jpg


グラフ1.jpg

 グラフは、排煙量ごとに、有効開口部の排煙効率が最大になる最小のHc(sc)を示しています。排煙口高さがグラフに示された高さを下回る場合、排煙効率は低下します。
 特に重要なのは、排煙量が大きいほど十分な煙層厚さが必要になる点です。煙層が形成されていない状態では、排煙設備の能力は十分に発揮できません。「排煙量を増やせば安全」という単純な考え方は通用しません。避難安全検証法における排煙設計では、排煙量と煙層厚さとのバランスを考慮した設計が不可欠なのです。

・天井高さが不足する場合の排煙設計の工夫
 十分な天井高さが確保できず、排煙口の設置高さが低くなる場合には注意が必要です。このような条件下では、排煙口を複数に分割し、1開口当たりの排煙量を小さくする設計とすることで、排煙効率の低下を抑えることができます。
 その結果、各排煙口の効率を維持しながら、全体としての有効排煙量を向上させることが可能となります。

設計上の重要ポイント

 排煙効率を向上させるための設計上のポイントを、ここまでで一旦まとめます。いずれもたいへん重要なものなので、もう一度振り返り、しっかり理解してください。
 ・排煙口高さが低いと排煙効率は低下する
 ・排煙量が大きいほど必要な煙層厚さは増加する
 ・天井高さが不足する場合は「排煙口の分割」が有効
 ・排煙量と煙層厚さのバランス設計が最重要

押出排煙方式

 押出排煙方式とは、自然排煙方式における給気口に機械給気設備を設置し、強制的に給気を行うことで室内の圧力を高め、排煙口から煙を排出する方式です。避難安全検証法が告示1441号として施行された当初は「第2種排煙方式」と呼ばれていたものが、名称は変更されましたが、検証方法自体は同じです。
 告示式
 式4.jpg

S(sc)
 当該防煙区画に係る送風機の当該防煙区画に設けられた有効開口部から空気を排出することができる能力(単位 ㎥/分)

As(sc)
 当該有効開口部の開口面積(単位 ㎡)

 排煙量は、有効開口部面積に依存するのではなく、有効開口部から空気を排出する能力によって決まります。ただし、有効開口部面積が小さい場合は、隣接室との圧力差が50Pa以上となり、扉の開閉に支障をきたすおそれがあります。そのためAs(sc) S(sc) / 550とする必要があります。
排煙方式.jpg

 押出排煙方式は、火災が発生している室に空気を強制的に送り込み、火災の拡大を早めてしまうおそれがあります。そのため、実際にはほとんど利用されていません。火災室に設置する場合には、給気口の設置位置に十分注意してください。

 これまで3回にわたり、避難安全検証法における有効排煙量と排煙設備の考え方について解説してきました。
 避難安全検証法は、排煙量を予測し、煙の発生量からこれを差し引くことで、煙降下時間の延長を評価できる優れた手法です。また、基本的な考え方を理解していれば、比較的簡単で誰でも活用できる面白い方法です。外注業者などに頼って任せてしまうのは、たいへんもったいないと思います。
 心ある設計者のみなさまには、ぜひご自身の力で検証できる正しい知識と有用なスキルを身に着けて、安全で美しい建物づくりに貢献していただきたいと思います。

 本サイトの「避難安全検証法について」では、避難安全検証法の基本的な考え方や仕組みを解説しています。まずはこちらをご覧いただき、基礎的な知識を身につけてください。
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