Column避難安全検証法使いこなし術

(40)徹底解説「煙高さ判定法」 番外編 区画避難安全検証法

2025/01/15

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 今回は、好評の徹底解説「煙高さ判定法」シリーズの番外編として、区画避難安全検証法について解説します。コラム『(13) 避難安全検証法を形骸化した区画避難安全検証法【ルートB1』ではやや辛口の意見を述べましたが、本コラムでは区画避難安全検証法の利用方法を中心に解説したいと思います。
 文末に告示474号を添付しますので、照らし合わせながらご一読ください。また、区画避難安全検証法では階避難安全検証法の検証方法が用いられますので、検証方法については階避難安全検証法の解説をご参照ください。

適用除外項目

(避難上の安全の検証を行う区画部分に対する基準の適用)
建築基準法施行令第百二十八条の六
居室その他の建築物の部分で、準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されたもの(二以上の階にわたって区画されたものを除く。以下この条において「区画部分」という。)のうち、当該区画部分が区画避難安全性能を有するものであることについて、区画避難安全検証法により確かめられたもの(主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られた建築物の区画部分に限る。)又は国土交通大臣の認定を受けたものについては、第百二十六条の二、第百二十六条の三及び前条(第二項、第六項及び第七項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。

 排煙設備の設置、排煙設備の構造、内装制限の適用除外について記載されています。まとめると、主要構造部が準耐火構造、または、不燃材料で造られた建築物の部分を、準耐火構造の床、もしくは壁、または、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画され、区画避難安全性能を有していることが、適用除外の条件とされています。

区画避難安全性能とは

2 前項の「区画避難安全性能」とは、当該区画部分のいずれの室(火災の発生のおそれの少ないものとして国土交通大臣が定める室を除く。以下この章において「火災室」という。)で火災が発生した場合においても、当該区画部分に存する者(当該区画部分を通らなければ避難することができない者を含む。次項第一号ニにおいて「区画部分に存する者」という。)の全てが当該区画部分から当該区画部分以外の部分等(次の各号に掲げる当該区画部分がある階の区分に応じ、当該各号に定める場所をいう。以下この条において同じ。)までの避難を終了するまでの間、当該区画部分の各居室及び各居室から当該区画部分以外の部分等に通ずる主たる廊下その他の建築物の部分において、避難上支障がある高さまで煙又はガスが降下しないものであることとする。

 区画避難安全検証法も、避難時間判定法と根拠は同じであることがわかります。

区画部分の設定

区画の範囲は以下の示すような適用パターンが考えられます。
(1)区画部分が離れている
区画パターン(1).jpg

(2)区画部分が連続している
区画パターン(2).jpg(3)複数の室をまとめて区画する
区画パターン(3).jpg

 ※煙高さ判定法では適用できますが、避難時間判定法では適用できない区画方法です。

適用条件

 区画部分の設定は、前述のパターン、及び、以下の適用条件の範囲であれば可能です。また、一居室を区画部分とする場合は、国土交通省告示474号における第四以降(階避難安全検証)の計算を省略することができます。
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(a)主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られた建築物の区画部分である。
(b)準耐火構造の床若しくは壁又は防火設備で区画されている。
・区画部分とその他の部分とが準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第九号のニロに規定する防火設備(令第112条第19項第二号に規定する構造のもの)で区画されること。
(c)2以上の階にわたらない。
(d)区画部分が竪穴部分に面する場合は、出入口の部分を除き、区画部分と竪穴部分とを準耐火構造の壁又は法第2条第9号にニロに規定する防火設備(令第112条第19項第二号に規定する構造のものではめ殺し戸であるもの)で区画されている。
(e)区画部分以外の部分に存する者は、区画部分を通らずに避難できる。

「避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説」より抜粋

検証方法

 国土交通省告示474号における第四以降の計算を省略することができる1居室を区画する計画を例示します。
検証の方法.jpg

 上図の居室(2)部分に区画避難安全検証法を適用する場合には階避難安全検証法の居室(2)の居室計算を行います。そのためには検証対象の居室(2)に関するデータだけではなく、居室避難経路等となる共用廊下、階段(A)(B)、扉D1D4の検証に必要な数値も抽出する必要があります。検証の詳細は、本コラム「(17)徹底解説「煙高さ判定法」 第1回 居室避難開始時間~(21)徹底解説[煙高さ判定法] 第5回 居室煙層下端高さ(2)」を参照してください。

 以上のように、区画避難安全検証法は、避難時間判定法(ルートB1)と同様に区画された1室から適用が可能で、国土交通省告示474号における第四以降(階避難安全検証)の計算が省略できます。特に、煙高さ判定法であれば、面積が狭く、積載可燃物の発熱量が大きく、天井高さが低い居室であっても、居室の避難安全性能は確認しやすくなります。また、避難時間判定法では利用できない、患者の収容施設を有しない診療所、通所のみに利用される児童福祉施設や幼保連携型認定こども園等でも利用が可能です。区画避難安全検証法は、今後さらに適用物件が増え、利用が拡がっていくことが考えられます。
 居室の避難安全性能の確認ができれば、対象の居室の在室者の安全が確保されることは理解できます。しかし、無排煙としたい1室だけに避難安全検証法を利用できるようになった結果、建物全体の防災計画を正しい方向に導くという告示の潜在能力が発揮できないことは、非常に残念なことです。

 さて、徹底解説シリーズ「煙高さ判定法」、今回の番外編も含め19回にわたって持てる知識と長年の経験を総動員し書き連ねてまいりました。未だ正式な解説書も発行されず、解釈に苦慮せざるを得ない中、みなさまの避難安全検証法の理解と設計業務への活用に、少しでも役立てば嬉しい限りです。
次回からは、弊社が開発しました避難安全検証法自動計算ツールSEDシステムの活用法を紹介してまいります。マニュアルやチュートリアルでは説明し切れていない機能や操作方法、みなさまからのご質問が多い事項を中心に、できるだけ詳しく、わかりやすく、具体的に解説したいと思います。

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