(56)SED活用法(14) 室オブジェクト計算属性設定のポイント(ルートB1)
2025/09/15
避難安全検証法ルートB1で、階煙降下時間の算定対象とする室について、また、全館避難計算で算定対象とするか否かについては、申請の際に論点となることが多く、納得しがたい解釈を強いられることも少なくないものの一つです。今回は少し掘り下げて考えてみたいと思います。
階煙降下時間の算定室について
建築基準法施行令第192条第3項第一号ホでは、「当該階の各火災室ごとに、当該火災室において発生した火災により生じた煙またはガスが、当該階の各居室(当該火災室を除く。)および当該居室から直通階段に通じる主たる廊下その他の建築物の部分において、避難上支障のある高さまで降下するために要する時間」と定められています。
ところが、「避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説(日本建築センター)P113」では、「階煙降下時間は、火災室において発生した煙またはガスが、当該階の直通階段への出口を有する室において、避難上支障のある高さまで降下するために要する時間」と解説されており、最も重要な「当該階の各居室(当該火災室を除く。)および当該居室から直通階段に通じる主たる廊下その他の建築物の部分」が省かれています。
その結果、階煙降下時間の算定室は「階出口を有する室(ただし、階出口を有する室が居室であり、その居室で出火した場合は除く)」と解釈されるようになりました。このため、階出口を有する室が非居室の火災室である場合、その室で出火した際に算定から除外されないという不整合が生じています。また、避難者が存在しない倉庫や機械室、電気室に地上への扉が設置されている場合、それらを階煙降下時間の算定室とすべきとする非現実的な解釈をする審査機関も後を絶ちません。誤りを指摘しても解説書の文言を盾に認められない場合があります。
詳細な解説は、本コラム「(11) 階煙降下時間算定室【ルートB1】」「(38) 建築基準法施行令から読み解く避難安全検証法(前編)」を参照してください。
室オブジェクト「計算属性設定」
SEDでは、次の2条件から階煙降下時間算定室を自動判定したうえで、ユーザーが詳細を設定することで、納得しがたい解釈を含めた多様な検証に対応できるよう設計されています。
条件1.居室・非居室に関わらずAarea(floor)に含まれる室に階出口が設置されている室
条件2.避難者の存在しない室は含まない
よくある計画図面を例示します。
この計画では、階出口が設置されない避難廊下、Aarea(floor)に含まれない空調機械室を除き、自動的に階煙降下時間算定室として設定されます。これは、Aarea(floor)に含まれない部分が、往来する在館者を含めて無人の室であり、検証計算から除外されるためです。Aarea(floor)の扱いに関しては、「避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説(日本建築センター)P166」を参考にしてください。
では、それぞれの室について、室オブジェクトのプロパティ「検証計算設定」で扱いを確認し、設定していきます。
・空調機械室
Aarea(floor)に含まれないので検証の範囲外となります。したがって、D1扉も階出口に含まれません。
・電気室
高圧受電設備が設置されているため、取扱者以外の立ち入りが禁止されています。法的に立ち入りが禁止されている室は避難経路にはなり得ないため、階煙降下時間を算定する必要はありません。そのため、電気室に通じるD7扉をプロパティで使用不可に設定します。これにより電気室に避難者は存在しなくなり、階煙降下時間の算定対象から除外されます。同時に地上へ通じるD2扉も階出口に含まれなくなります。
・居室
階出口が設置されているため、階煙降下時間算定対象となります。ただし、直接火災室から地上に避難できる出口を設ける方が避難計画上安全であることが明らかです。そのため、自身で出火した場合の階煙降下時間は除外できます。これを反映するため、「自室火災での階煙降下時間を除外」を☑オンとします。詳細は「避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説(日本建築センター)P282」質疑19を参考にしてください。
・非居室(火災室)
非居室(非火災室)同様に扱うことは可能と考えられます。しかし、避難経路として利用する場合、非居室であることを理由に「自室火災での階煙降下時間を除外」が認められないケースがあります。「自室火災での階煙降下時間を除外」が認められないと階煙降下時間は非常に短く算定され、階検証を成立させることが困難になります。このような場合、施錠管理を行い、避難に利用できない経路であることを主張する以外に方法はありません。そのため、避難廊下から非居室(火災室)に通じるD4扉をプロパティで使用不可に設定します。
・非居室(非火災室)
工場等でよく見られる計画です。便所が避難経路となりえるかは、設計者によって判断が分かれるかもしれませんが、ここでは安全側の判断として、避難経路になると捉えます。その場合、特に設定を変える必要はありません。避難経路にならないと判断する場合は、この室で階煙降下時間を算定する必要がないため、「階出口設置室でも階煙降下時間算定室から除外」を☑オンとします。
尚、「階出口設置室でも階煙降下時間算定室から除外」設定は、あくまで煙降下時間算定対象室から除外するだけです。避難者がいない検証を行う場合は、同時に地上へ通じるD5扉の階避難方向を「使用不可」と設定してください。
・避難廊下
告示に示される検証方法では、階出口が設置されていないため、階煙降下時間算定対象にはなりません。しかし、建築基準法施行令第192条第3項第一号ホには、「当該居室から直通階段に通じる主たる廊下その他の建築物の部分」で階煙降下時間を算定すると示されています。そのため、法文上は、避難途上の「避難廊下」部分でも階煙降下時間を算定する必要があるように読めます。
避難安全検証法の運用が始まった当初は、避難途上の室の階煙降下算出し、階避難完了時間と比較することを求める検査機関もありました。しかし、理由は不明ですが、最近では減っているようです。
SEDでは、「無条件に階煙降下時間を算定」を☑オンにすることで、どのような室であっても階煙降下時間が算定できます。確認申請で避難廊下での階煙降下時間を求められない場合でも、こちらを☑オンにして、避難途上の安全性能を確認することをお勧めします。
・ホール
階出口が設置された避難経路であるため、階煙降下時間算定室となります。
上記の設定を行った添付ファイル「階煙降下時間算定室.seda」で確認できます。
全館避難計算から除外
全館避難安全検証では「避難階以外の階からの主たる避難経路である地上への各出口」を通らずに避難できる居室は、検証の対象から除外できます。☑オンとした居室の在室者数、階出口は全館避難安全検証から除外されます。
詳細な解説は、本コラム「(50)SED活用法(9) 計算設定(ルートB1)」を参照してください。
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本コラムで用いたSED Ver3.1.38.3
本コラムで使用したSEDファイル
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