Column避難安全検証法使いこなし術

(63)徹底解説「避難時間判定法」 第1回 避難安全検証法とは

2026/01/01

  • 避難時間判定法(ルートB1)

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 煙高さ判定法(ルートB2)の施行から4年が経過しました。弊社では、避難時間判定法(ルートB1)から煙高さ判定法へ、徐々に移行すると予測し、SEDシステムを改良して早期に対応しました。並行して本コラムでも18回にわたり詳細に解説し、発信してきました。
 しかし現状はどうでしょう。煙高さ判定法はごく限られた物件で試験的に使われる程度で、ほとんど普及しておらず、国土交通省からは未だに解説書すら発行されていません。
 それどころか、避難時間判定法(ルートB1)についても設計士の理解は進まず、外注の申請書作成代行業者に丸投げされているのが実情です。避難安全検証法は、仕様設計で進めた計画に計算書を添付すれば排煙設備の適用除外が受けられる程度のものとしか扱われていません。このままでは設計士自らの存在意義すら失われそうな現状に、私は脅威を感じざるを得ません。
 そこで改めて、避難時間判定法(ルートB1)の解説を連載します。今回は、お問い合わせの多い解説書(参考書籍)の紹介と、性能設計の基本的な考え方についてです。『何をいまさら』と感じられる方も、もう一度基本から見直すことでさらに理解を深め、日々の業務に積極的にご活用いただきたいと思います。

避難時間判定法(ルートB1)の解説書

 インターネットで検索すれば大概の情報は入手できる時代ですが、しっかりと学び理解するためには、信頼できる書籍を手元に置き、事あるごとに何度も読み返すことが重要だと私は考えています。そこで、現在、入手可能な避難安全検証法に関する専門書籍を3冊紹介いたします。

『避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説』
監修 国土交通省国土技術政策総合研究所
   国立研究開発法人研究所
編集 防火・避難規定に関する新たな検証法マニュアル編集委員会
発行 一般財団法人日本建築センター(2023/03/30
 唯一の公式解説書です。防災設計の基礎理解を前提としているため、やや難解な部分もありますが、必ず手元に置くべき一冊です。日本建築センターのホームページから購入できます。

『避難安全検証法実践マニュアル-企画設計から審査対応まで 実例から学ぶ用途別要点』
著者 九門宏至
発行 翔雲社(2023/09/30
 弊社代表・九門宏至による最新の解説書です。SED(避難安全検証法検証ツール)の開発経験と、3,000件を超える検証実績から得たノウハウを用途別に解説しています。実際の申請・審査場面での注意点や問題点を、実例を挙げて紹介します。また、建物の用途別に検証の要点を丁寧に解説し、実務に役立てていただけるよう構成しました。全国の主要書店、オンライン書店、弊社サイトの書籍販売ページから購入可能です。

『避難安全検証法設計実務ハンドブック-性能設計で変わる建築設計の実務』
著者 九門宏至 黒木一五郎
監修 元京都大学防災研究所所長 田中哮義
発行 清文社(2005/12/15
 弊社代表・九門宏至による初めての解説書です。避難安全検証法を扱う初めてのソフトAvoid(株式会社ビーイング)の開発に参加し、性能設計の基本を勉強しながら、告示1441(現告示510)に制定に携わった方々から得た知識や仕様設計からみた疑問点をまとめました。主として避難安全検証法の基本事項を解説した入門書です。既に絶版となっており一般書店では流通していませんが、コピー製本による再刊にて弊社サイト書籍販売ページより購入可能です。

まずは、建築基準法施行令を理解する

 避難安全検証法(避難時間判定法)といえば、国土交通省告示の509号(区画避難安全検証法)、510号(階避難安全検証法)、511号(全館避難安全検証法)と考える方が多いでしょう。しかし、その基本理念は、これらの告示よりも上位の法規である建築基準法施行令に示されています。
 具体的には次の3項目です。
 ・施行令第128条の6『避難上の安全の検証を行う建築物の区画に対する基準の適用』
 ・施行令第129条『避難上の安全の検証を行う建築物の階に対する基準の適用』
 ・施行令第129条の2『避難上の安全の検証を行う建築物に対する基準の適用』

 詳細は、本コラム(38)建築基準法施行令から読み解く避難安全検証法(前編)」で解説しています。ぜひその内容を理解したうえで、今後のコラムを読み進めてください。

避難安全検証法の考え方

 避難安全検証の基本は、建物内で発生した火災による煙やガスに在館者が曝されることなく避難できることです。そのためには、安全性能が検証で確認できるような設計が必要です。安全性能を確認する範囲に応じて、次の3つの検証方法が定められており、基本的な考え方はどれも同じです。
①区画避難安全検証法:1フロアの区画された部分を対象とする。
②階避難安全検証法:1フロア全体を対象とする。
③全館避難安全検証法:建物全体を対象とする。

煙に曝されず避難完了できることを確認する方法

 過去の知見では、出火室(火災が発生した室)の在館者が最初に避難を開始し、出火室以外の在館者は遅れて避難を開始することが明らかになっています。これはみなさんも感覚的に理解できると思います。避難安全検証法ではこれを前提とし、次の手順で安全性を確認します。

①出火室の在館者が煙に曝されずに出火室の外に避難可能であることを確認(居室検証)
 在館者が存在する室は、建築基準法では「居室」と定義されます。そこで、居室毎に火災を想定し、煙に曝されずに室外に避難可能であることを確認します。これを「居室検証」と呼びます。
 では、在館者がいない「非居室」で火災が発生した場合は確認不要ということになるのですが、それでよいでしょうか。「非居室」であっても、そこを通らなければ避難できない在館者がいると、その経路で煙曝露の危険があります。つまり「非居室」についても安全性の確認と対策が必要です(詳細は今後のコラムで解説していきます)。

②出火室以外の在館者が出火室から漏れ出た煙に曝されずに階の出口に避難可能であることを確認(階検証)
 居室検証で、自室から安全に室外へ避難できることが確認できたら、次は他室からの避難者も含めて、出火室外で煙に曝されずに階の出口まで到達できることを確認します。これを「階検証」と呼びます。
 ここで注意すべきは、出火室以外の在館者の避難開始が遅れる点です。告示に示される階検証では、階出口が設置された室で煙に曝されなければ、そこに至る経路上でも曝されることはないと扱われます。しかし、防災計画の基本を満たさない設計では避難途上で煙に曝される恐れが生じます。在館者の避難途上の安全性についても確認と対策が必要です(詳細は今後のコラムで解説していきます)。

避難時間判定法が抱える問題点

 ここまでの説明だけで、既に2つの問題点が見えてきました。細かい事項も挙げればその数はさらに増え、キリが無いのです。
 このように法令上の問題がある場合、本来ならば、設計者や行政、確認審査者が法の理念に基づいて適切な対応策を講じることが求められます。しかし現実は、性能設計を前提とした検討過程を経て対策が講じられる事例は少なく、法令解説書の一部だけを切り取って言葉尻を付くような形式的な法解釈に終始してしまうものが目立ちます。
 これでは真摯に安全性能を追求しようとする設計者の意欲が削がれるのも当然で、結果として、申請書作成の技巧のみに長けた代行業者が横行し、安全性能に欠ける設計を増大させる一因にもなっているのです。
 本コラムではこれから数回にわたり、避難時間判定法の基本的な解説とともに、これらの問題点の具体的な指摘と効果的な対策方法について詳しく述べていきます。それによって、この現状に警鐘を鳴らしたいと願うのです。

 本サイトの「避難安全検証法について」では、避難安全検証法の基本的な考え方や仕組みを解説しています。まずはこちらをご覧いただき、基礎的な知識を身につけてください。
 株式会社九門は、避難安全検証法をより身近に、より実務で活用していただくことを目的として、SED(避難安全検証自動計算システム)を開発しました。避難安全検証法の基本を理解していれば、SEDの運用は決して難しくありません。
 SEDでは、避難時間判定法(ルートB1)の検証で入力したデータを、検証方法を切り替えるだけで煙高さ判定法(ルートB2)にもそのまま利用できます。室や開口部をオブジェクトとして扱い、CAD感覚で直感的にデータを入力できる点もSEDの特長です。ぜひSEDを活用し、避難安全検証法を日常の設計業務に取り入れてください。30日間の無料トライアルをご用意しています。ぜひ一度お試しください。

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