(77)徹底解説[避難時間判定法] 第15回 階歩行時間
2026/10/10
- 避難時間判定法(ルートB1)
今回は「階歩行時間」について解説します。
「階避難完了時間」の構成要素のひとつですが、前回コラムの説明通り、避難完了時間に占める割合は8.9%しかないので、過度に細部へこだわらず、客観的に最も不利と思われる避難経路を採用することがポイントです。併せて、防災計画の基本に従い、歩行経路を、階出口への避難経路が明確になるよう計画すると洗練された設計となります。
階歩行時間とは
階歩行時間とは、当該フロア内で階出口まで最も時間のかかる避難経路の歩行時間です。居室検証と同様、歩行距離を歩行速度で除して求めます。
国土交通省告示510号には以下の通り示されています。
ロ 次の式によって計算した階に存する者が当該階の各室等の各部分から直通階段の1に達するまでに要する歩行時間のうち最大のもの(単位 分)
![]()
ttravel(floor),i:
階に存する者が当該階の各室等の各部分から直通階段の1に達するまでに要する歩行時間(単位 分)
lfloor:
当該階の各室等の各部分から直通階段への出口(当該火災室が直通階段への出口を有する場合においては、当該火災室の直通階段への出口のうち、その幅が最大のものを除く。)の1に至る歩行距離(単位 m)
v:
第1号ロに規定する歩行速度(単位 m/分)
避難階の場合、「直通階段の1に達するまでに要する歩行時間」を「地上への出口の1に達するまでに要する歩行時間」とします。
階歩行経路の考え方
①避難経路の起点は居室内の歩行経路の起点と同じ
図1のように、居室内は居室歩行経路作成時と同様に垂直2等分線による領域按分により経路の起点を決め、居室出口から階出口は、最も近い出口に向かいます。
②当該火災室が直通階段への出口を有する場合は、当該火災室の直通階段への出口のうち、その幅が最大のものを除きます。
図2のように、直通階段への出口(避難階においては地上への出口)が設置される場合、その幅が最大の出口付近で出火したものと想定し、当該出口は利用できない前提で歩行経路を設定します。
図2
③階歩行時間は「最長避難経路」で評価する
避難安全検証法では、避難に最も時間を要する経路を採用します。したがって、日常動線ではなく、火災時に最も不利となる避難経路を想定しなくてはなりません。図1・2のように階歩行経路が複数ある場合には、歩行時間が最大のものを採用します。
④歩行速度は、避難経路によって異なる場合がある
図3は建物内に店舗が設置されています。この例で建物を使い慣れた人が利用する事務室や会議室等を階歩行経路の起点とする場合はその室内の歩行速度は78m/分とし、来店客など不特定の人が混在して利用する廊下内の歩行速度は60m/分として算定します。
図3
歩行経路は防災計画の要
避難安全検証では、利用可能な全ての扉を利用して一様に避難するとしています。設計者が避難方向を意図的に決めて検証結果を制御することを防ぐためです。ところが、これが裏目に出て、性能よりも仕様規定が重視される審査や運用の場面で、常識ではとても考えられない方向への避難を前提とした安全性能確認を求められることがあります。
図4は、防災計画上ごく一般的な避難経路です。
図4
この例の歩行経路は、第一次安全区画となる「廊下」「風除室」を通るように設定されています。告示510号に、歩行経路は「階に存する者が当該階の各室等の各部分から直通階段の1に達するまでに要する歩行時間」と規定されていますが、実務上「機械室」「電気室」「ゴミ庫」「便所」への避難経路が設定されていなくても、確認申請で指摘されることは滅多にありません。
ところが、階煙降下時間の算定対象室については「機械室」「電気室」「ゴミ庫」「便所」も含めるべきであるとの指摘を受けることがあります。通常、避難者が利用するとは考えられないにもかかわらず、階出口が設置されているからというのがその理由です。
確かに告示第510号では、出火室ごとの階避難完了時間と階煙降下時間を個別に比較しません。階避難完了時間は、まず各出火室について最も不利となる階避難開始時間、階歩行時間、階出口通過時間をそれぞれ求め、それらを合計して算定します。一方、階煙降下時間については、各出火室に対して、階出口が設置された室の中で最も短くなる煙降下時間を抽出し、その最小値を階煙降下時間として扱います。そして、階避難完了時間<階煙降下時間であることを確認します。
このように、検証計算では避難経路と煙伝播経路、さらに煙高さを評価する室との間に、必ずしも出火室ごとの対応関係や整合性があるわけではありません。
しかしながら、避難者が、火災に遭遇した時に、その先に階出口があるかどうかわからない室に向かって避難するなど、常識的に想定し難いことです。そのような室に避難者が存在する前提での安全性確認は、非現実的であり、無意味であると考えます。
防災計画の要である歩行経路。この問題については、本コラム「(11)階煙降下時間算定室【ルートB1】」にも解説しています。ぜひご一読ください。
本サイトの「避難安全検証法について」では、避難安全検証法の基本的な考え方や仕組みを解説しています。まずはこちらをご覧いただき、基礎的な知識を身につけてください。
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